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社説・コラム

[施行迫る特定秘密保護法] 海上自衛隊呉地方総監・伊藤俊幸さん(56) 防衛情報 保全を徹底

 特定秘密保護法により、省庁ごとにばらばらだった「秘密」の基準やルールが共通になる。安全保障に関する情報も他省庁と共有できる。「何が秘密かあいまい」と懸念する声を耳にするが、透明性はむしろ高まると考える。「ここまでは言ってよく、ここからは駄目」という境界が明確になるのだから。

 防衛分野での指定対象は19項目。例えば呉基地では訓練、演習、武器、弾薬の種類といった事項が該当する。もともと自衛隊法で防衛秘密に指定されている。保護法の施行により、「秘密」を規定する法的枠組みが変わるにすぎない。これらは公になったら国の安全が脅かされる情報であり、今まで市民が知らなくても特段不自由はなかったと思われる。われわれも従来通り情報保全を徹底する。

 2007年、護衛艦しらね乗組員の男性2等海曹が、防空・迎撃能力データを含むイージス艦の中枢情報を隠し持っていた事件が発覚。当時、海上幕僚監部の情報課長として対応に追われた。

 高度な軍事情報を共有する米国から厳重な抗議を受けた。海自の管理体制が問われ、事件の後に米国から「機微な」情報の提供を得られなかったことがある。「その国の情報保全体制が信頼に足るものでない」と他国から判断されると、質の高い情報は得られないと痛感した。保護法は他国と機密性の高い情報を共有する上で必要となる。

 ただ、護衛艦たちかぜのいじめ自殺訴訟で、乗組員に実施したアンケートに基づく文書を公開しなかったのは誤りだったと思う。この種の情報は特定秘密には該当しない。今後は同様のケースで、特定秘密だとして隠すことはないし、あるとすれば断じて許されないことだと考えている。(聞き手は小島正和)

(2014年12月7日朝刊掲載)

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