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社説・コラム

[施行迫る特定秘密保護法] 元経済産業省官僚・古賀茂明さん(59) 密室の議論 誤り招く

 特定秘密保護法をめぐっては「知る権利」の侵害という抽象的な議論が多いが、知る権利はもともと侵害されている。現行の情報公開法は、政策決定に至る議論の過程を出さなくてよい内容になっている。秘密保護法を考える上で情報公開制度の見直しが必須だ。

 経済産業省時代、国家公務員制度改革推進本部事務局の審議官として、天下り規制の強化に取り組み、「改革派官僚」と呼ばれた。2011年に同省から退職勧奨を受け、退官。情報公開に消極的な官僚の姿を見てきたという。

 国に重要機密があることは否定しない。私は、政治家や官僚を性善説や性悪説ではなく「性弱説」に立ってみる。国民のために働きたくても、保身や外圧の中で、それとは真逆の政策に傾く時がある。それを修正させる切り札になるのが情報公開だ。政策決定までの発言や責任の所在など過程が見えることが強力な抑止力になる。

 秘密保護法を廃止することを前提に、情報公開法、公文書管理法改正とのセットで検討するべきだ。

 安倍政権は集団的自衛権を行使し米国と一緒に世界に出て、列強国としての日本のプレゼンスを発揮したいのだろう。そこで必要になったのが秘密保護法だ。戦争ができる国づくりを進めているが、日本が新たに敵をつくる危険性が高い。

 今後、重要局面に入った時、秘密指定で国民にばれないとなれば、密室で誤った判断がなされる。米国がイラク戦争で犯したことが起きうる。いつの間にか戦争に巻き込まれ、国民が「実害」を被る。(聞き手は胡子洋)

(2014年12月8日朝刊掲載)

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