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佐野大使「少し悲観的」 機運水差す 被爆者ら反発 ウィーン会議

 第3回「核兵器の非人道性に関する国際会議」初日の8日夕、核爆発が起こると負傷者の救護活動が不可能になるとの意見に対し、日本政府代表団の佐野利男軍縮大使が「少し悲観的だ」と反論した。核兵器の非人道性を踏まえて廃絶を目指す会議の機運に水を差し、被爆者たちが反発した。(ウィーン発 田中美千子)

 佐野氏は、緊急時の対応をテーマにした討議で発言。過去2回の国際会議の議長総括が、いずれも現場での救護や救援活動の限界を指摘した点に触れ「(それよりも)技術的、医療的、科学的な救援能力を高めるよう、各国政府や国際機関を後押しすべきだ」と述べた。

 討議後、広島市南区出身でカナダ・トロント市在住の被爆者サーロー節子さん(82)が佐野氏に歩み寄り、真意を質問。佐野氏は「事故で核爆発も起き得る。救援できないと諦めるより、可能な限り研究すべきだと考えた」と説明したが、サーローさんは「理解できない。被爆者の思いとかけ離れている」と不快感を示した。

 会議を主催するオーストリア政府のクメント軍縮軍備管理不拡散部長も「許容し難い核兵器の影響に備えるよりも、廃絶することに力を注ぐべきだ。国際社会の賛同は得にくいと思う」と硬い表情で語った。

(2014年12月10日朝刊掲載)

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