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社説・コラム

天風録 「目線の上げ下げ」

 ちまたに並ぶ政党ポスターや政権公約の表紙を見比べて、ふと気付く。与党はどちらも党首の目線がこころもち上向き加減で遠くを見ている。片や野党は大半の党首が正面を見据える▲目線が違えば、映る世界も随分異なるらしい。この2年で100万人以上の雇用が増え、給料も上向き、デフレ脱出への薄日だと与党は言う。野党は物価とのつりあいで実質の給料が15カ月下がり続けている暗雲を指す。景気の空模様には予報士が見当たらず、何とももどかしい▲楽観主義か悲観主義かとも言い換えられよう。コップ半分の水を、もう半分も入っていると見るか、まだ半分しか入っていないと見るか。どちらにしても「信じる者は」の続きは知っている。「救われ」もするし、足元を「すくわれ」もする▲こちらの楽観主義はどうだろう。人道に背く核兵器を葬り去ろうと集まった国際会議の議論に「少し悲観的では」とわが国の軍縮大使が水を差した。原爆の悲惨を説くどころか、核爆発後の救援策も研究すべきだ、と▲どこか核保有国のような口ぶりである。被爆者を隣の席に置いての発言だけに、なおさら心が寒くなる。見たい方向だけ見ていては、やはり危うい。

(2014年12月11日朝刊掲載)

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