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社説・コラム

『ひと・とき』 広島女学院大教授・三桝正典さん 

ひと味違うふすま絵

 現代アートで多彩な作風を見せる一方、3年前からふすま絵の制作を始めた。アクリル画の技法を取り入れ、日本画や水墨画とはひと味違う空間を醸す。「歴史を経た生活空間に絵を置くことで、時代の中に自分が入り込むような感覚を味わえる」と魅力を語る。

 ふすま絵の魅力を知るきっかけは、広島市安佐南区のフランス料理店の庭にあった。昭和を代表する作庭家、重森三玲(みれい)(岡山県吉備中央町出身)が手掛けた庭にある茶室の内装を依頼され、和の世界の奥深さを知った。

 頼山陽史跡資料館(広島市中区)の頼山陽居室で展示中のふすま絵は、居室に面した庭にある被爆樹木のクロガネモチを描いた。葉の緑は微妙に色合いが異なり、アクリル絵の具に墨を加えて描いた幹の質感からは生命力を感じる。

 21歳で脱藩を企てた山陽が幽閉された場所。「原爆に焼かれながら復活したクロガネモチと、ここで歴史書『日本外史』の構想を練った山陽。共通する『無から有を生み出す力』を自分なりに表現できた」(石川昌義)

(2014年12月11日朝刊掲載)

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