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≪対論 永田町≫ 外交・安保 平岡秀夫氏/林芳正元防衛相

■記者 岡田浩平

 米軍普天間飛行場(沖縄県)の移設問題や中国漁船衝突事件など政権交代後、外交で政府の対応が批判される局面が続いた。民主党で菅直人首相を支持しリベラル派に位置する平岡秀夫氏(山口2区)と、自民党で防衛相を務めた林芳正氏(参院山口)に日米、日中関係をはじめとした外交、安全保障の基本姿勢を聞いた。

◇平岡秀夫氏(民主・山口2区)

東アジア全体で協調を

 ―菅政権は日米関係を重視しているとみられています。
 今の北東アジア情勢を考えると日米が重要なパートナーなのは疑いがない。鳩山政権時代にぎくしゃくした関係を修復したいとの思いはある。ただ、東アジア全体の協調を求める民主党の基本的考え方は変わっていない。

 ―二つの大国間で日本はどう振る舞うべきでしょうか。
 日本の立ち位置は国際ルールにのっとってしっかりつくらないといけない。イメージは、鳩山由紀夫前首相が言った東アジア共同体による安全保障体制だ。地域の秩序を乱す者は地域のみんなでいさめていくべきだ。経済面も相互依存が高まれば安全保障に資する。

 ―では今後の在日米軍の在り方をどう考えますか。
 短期的には今、在日米軍を一気に縮小すれば国民が不安を感じる。中長期には地域の集団安全保障体制を築く中で、米軍の役割は減り、基地負担も軽減されるだろう。

 ―普天間問題をめぐる教訓は。
 県外を模索した鳩山氏は先日、「外務、防衛両省の官僚が自分の思いを十分に受け止めてくれなかった」という趣旨の発言をした。私も当時、当初の再編計画にかかわった官僚ではなく別の担当者で見直しを考えるべきだと言った。もし代わっていたら見直せたかもしれない。その意味で、将来も可能性がないとは思わない。

 ―民主党は初の政権下で外交、安保の姿勢を固める途上ですか。
 自民党が対米協調を中心に安全保障を考えるなら、民主党は東アジアを中心に考えるという議論は当然あっていいし、その枠内なら混乱はないと思う。むしろそういう立ち位置にあると思われている民主党が自民党以上に対米協調、軍事力依存の主張をする方が大きな混乱を招く。党内でしっかり議論をしていく必要はある。


◇林芳正元防衛相(自民・参院山口) 

日米基軸に中国と均衡

 ―中国が台頭する中で日米、日中の関係はどうあるべきですか。
 安全保障では日米同盟を基軸に、中国と勢力均衡を保つ必要がある。軍事バランスが崩れれば、中国の軍の中で「少し何かやってみよう」と冒険心が起きかねない。最悪の事態を想定した現実論に立たなければならない。

 いわば2階建ての家で1階が安全保障、2階が経済。1階を安定させ、経済で日米、日中、米中の相互依存関係を深化させるべきだ。経済が拡大均衡すれば不測の事態が起きる確率が下がり、安全保障は縮小均衡に入る。日米などの2国間関係を堅持しつつ北大西洋条約機構(NATO)のような面的組織を目指す努力もいる。

 ―普天間問題を経て日米関係を再構築する策は。 
 先日、来日した米国の国会議員と会合を持った。普天間の解決へ日本が誠心誠意努力すると理解した上で、同盟を深化させる議論と必ずしもリンクさせないという点で米側も理解を示している。米軍再編以外にも、ミサイル防衛など取り組む課題はたくさんある。

 ―参院選公約では「集団的自衛権に取り組む」と記しました。 
 例えば、北朝鮮が撃ったミサイルが日本を越えて米国のハワイに落ちるときは、集団的自衛権になるので日本は打ち落とせない。少なくともこういう類型は認めたい。米国は日本を守るために若い兵士が命を落とすことが現実に起きうる。認めた方がいい共通認識を早くつくるべきだ。

 ―政権交代のたびに外交方針が変わると国益を損ないませんか。 
 外交はぎりぎりの綱引きだ。鳩山政権は日米同盟を傷つけ他国につけいる隙を与えた。非常に稚拙な外交をしている。民主党は高い授業料を国民に負担させて学んだはずだ。外交のストライクゾーンは非常に狭い。その中で違いを出すのが政党政治の在り方だ。

(2011年3月6日朝刊掲載)

 

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