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連載・特集

廃炉の世紀 第2部 日本の選択 <7> 地層処分(北海道・幌延町)

地下350メートル 試験本格化 放射性物質漏れに課題

 廃炉の作業は、使用済み燃料を原子炉から取り出すことから始まる。それは原発の外で再処理され、強烈な放射線を出す廃液が残る。この高レベル放射性廃棄物をどこで処分するか。国は処分地選びを一気に前へ進めようとしている。

 日本最北の北海道稚内市から南へ車で1時間余り。幌延町の広大な原野は地吹雪に包まれていた。一角に日本原子力研究開発機構の幌延深地層研究センター(深地層研)がある。高レベル放射性廃棄物を地下深くに埋め隔離する、地層処分の技術を研究している。

 調査が進む地下350メートルへゴンドラで降りた。東京タワーが収まる深さだ。400万~500万年前の泥岩層に、総延長760メートルの坑道が延びる。深地層研は2001年に開所し、坑道を掘る技術や地質変化などを確かめてきた。「350メートル坑道が完成し、重要な試験が本格化してきた」と総務・共生課の片田偉奈雄課長代理が説明する。

 ガラス固化体は、高さ約1・4メートル、直径約40センチ。表面線量率は、人が近づけば20秒以内に死に至る毎時1500シーベルトだ。固化体は厚さ約20センチの金属容器に入れ、水を通しにくい特殊粘土を重ねて地下300メートルより深くに埋める予定になっている。放射能のレベルがウラン鉱石並みに下がるには、約10万年の時間を要する。

 深地層研は今夏、固化体や容器の実物大のモデルを造り、実際に埋めて調べる国内初の試験を始めた。約190個のセンサーを設置し、5年程度かけて地下水や圧力などの影響を見る。

 「固化体が地下水に触れるまで、少なくとも千年は時間を稼げるとみている」と片田課長代理。リスクの一つは、容器やガラスが腐食して固化体から放射性物質が漏れ出すことだ。数万年単位で考えれば放射性物質が地下水に乗って地表に達する可能性は否定できない。昨年2月には坑道から最大で毎時60トンの地下水があふれ作業員が避難した。

 実際の最終処分の候補地選びは難航している。政府は昨年末、従来の公募方式から国が一定の基準に基づいて適地を示す方式に切り替えると決定。「国主導」へ転換しようとしている。

 放射性物質を持ち込まず、最終処分場にもしない―。機構の前身の核燃料サイクル開発機構と北海道、幌延町は00年の協定で取り決めた。研究期間は開所から「20年程度」。終了後は坑道を埋め戻す。だが「なし崩しで処分場になるのでは」との不安は根強い。

 自分の暮らす町がある日、候補地に指名される―。その時、安全は保障されるのか。片田課長代理は「知見を踏まえて『1万年の安全』を説明しても、受け止め方は人それぞれで難しい」とする。「研究では技術的な不確かさを一つずつ減らすことしかできない。最終的には、だれがどんな道を選ぶかにかかっている」

高レベル放射性廃棄物の地層処分
 日本では、使用済み燃料の再処理で出る放射能レベルの非常に高い廃液を閉じ込めたガラス固化体が、高レベル放射性廃棄物に当たる。地下深くに埋める地層処分を国は2000年に法制化。原子力発電環境整備機構(NUMO)が実施責任を負う。既に発生した使用済み燃料を全て再処理すると計約2万5千本の固化体が生じるとされる。

(2014年12月13日朝刊掲載)

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