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百島アートの公開続く 尾道 現代の課題を映し出す

 尾道市沖の百島で3年目を迎えた現代アートの拠点「ART BASE(アートベース)百島」。毎秋、展覧会を開いてきた。ことしの特別展「十字路―CROSSROAD」は、世界的に著名なアーティストの作品がじかに見られるとあって、全国から昨年の5倍を超す3500人以上が来場。好評のため来年3月末までの継続展示を決め、予約制で公開する。

 プロジェクトは、直島(香川県直島町)での個展をきっかけに瀬戸内海の島に魅せられたという広島市立大芸術学部准教授の美術家柳幸典が主導。過疎の島で廃校となった旧百島中校舎を借り受け、作家仲間や住民とギャラリー兼アトリエとして改装。2012年にオープンした。

 今回の特別展には4作家が参加。米ニューヨーク近代美術館や英テート・モダンといった有名美術館に作品が収められる顔ぶれだ。

 会場は百島と尾道港に計3カ所ある。旧校舎では、石内都の「ひろしま」シリーズや原口典之の代表作「オイル・プール」の「物性Ⅰ」、ブルース・コナーが米国による核実験の記録フィルムをコラージュした映像作品などが並ぶ。

 柳の代表作も網羅している。消費文明を痛烈に批判する「ワンダリング・ミッキー」、砂絵の万国旗の中をアリが行き来し壊していく「アント・ファームシリーズ」のほか、犬島(岡山市東区)で銅の精錬所跡を美術館として再生したプロジェクトの15年に及ぶ構想を模型やスケッチで紹介している。

 百島に1960年代にあった映画館も改装中で、柳作品を常設している。

 もう一つの会場は尾道港の県営上屋3号。原口の「F―8E CRUSADER」は、ベトナム戦争に出撃した戦闘機の原寸大の尾翼を再現。その隣にある柳の「アトミック・アーティクル9」。ネオンで点滅させた憲法9条の条文と放射性廃棄物をイメージしたドラム缶を配し、無言のメッセージを発する。

 全ての作品は一見、関連性がないようで、見ているうちに地球規模でつながる現代の課題であると気付く。私たちは今、未来への岐路(十字路)にいるのだと考えさせられる。  「まだ小さな細胞だが、多様なクリエーターが集まり、島が一つの生命体のように生き生きと成長してほしい」と柳。来場は1週間前までに予約する。アートベース百島Tel0848(73)5105。=敬称略(森田裕美)

(2014年12月13日朝刊掲載)

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