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被爆地の疑念解消課題

 米議会を12日に通過した国防権限法案には、第2次大戦中に原爆開発を推進した「マンハッタン計画」に関連する西部ニューメキシコ州ロスアラモスなど全米3カ所を「国立歴史公園」に指定する条項が盛り込まれた。被爆地や反核団体には原爆の美化につながるとの疑念も根強く、公園整備をいかに公正で客観的なものにできるか課題が残る。

 今回の指定は、原爆開発を「歴史上の革新的な出来事」として指定獲得に動いた地元をはじめ推進派のロビー活動の成果という色彩が強い。現在も広島、長崎への原爆投下を「支持する」との世論が6割近くに達するとされる米国内では、法案通過を疑問視する向きは少ない。

 しかし、国立公園化の動きには早くから被爆地や反核団体から「原爆開発を賛美するものになりかねない」と危ぶむ声が上がっていた。

 広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(72)は「核兵器の恐ろしさやヒロシマ、ナガサキの思いを伝えてほしい。原爆を落としたことは正しい、と美化してはいけない」と訴える。広島市平和推進課は「被爆の実態や原爆の惨禍を反映する内容にしてほしい」とし、近く米国政府に対し要請文を送ることを検討している。市は2011年12月、13年3月にも再考を求める要請文を駐日米大使宛てに送った。

 同じ懸念は、法案審議の過程で米議会公聴会でも取り上げられ、国立公園局幹部は「あらゆる立場を考慮し、バランスの取れた歴史解釈」に努めると約束した。こうした言葉をどう実践するか「核なき世界」を掲げるオバマ政権の姿勢が問われる。

(2014年12月14日朝刊掲載)

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