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社説・コラム

社説 野党立て直し 衆院選 政策本位で民意つかめ

 衆院選は自民、公明の与党が定数の3分の2を超える議席を得た。半面、劣勢を伝えられた民主党も公示前の62議席から73議席に上積みした。共産党は8議席を21議席に大きく伸ばした。投票率は戦後最低だったものの、有権者のバランス感覚が一定に働いたのかもしれない。

 無党派層も与党に雪崩を打ったとはいえないようだ。

 共同通信社の出口調査による投票先は、比例代表では維新の党、自民、民主の順で拮抗(きっこう)し、共産が迫っていた。小選挙区では自民31・7%、民主28・5%に共産、維新が続いていた。

 沖縄では辺野古新基地に反対する候補が、四つの小選挙区全てで自民の候補を抑えている。短期間で候補を調整し、対抗する受け皿をつくった。その地域にとって重大な問題について、政党の枠を超えた政治勢力の結集があれば、流れは変わることを証明していよう。

 しかし、野党第1党である民主の力不足は指弾されても仕方がない。海江田万里代表の落選と代表辞任表明や、元首相菅直人氏の小選挙区での落選が重なったのは異例のことだろう。

 そもそも、民主は小選挙区を主体にした今の選挙制度の下で、政権交代の実現を目的に結党されたはずだ。曲折を経て、一度は自民を下野させている。ほぼ全ての選挙区に候補を擁立することで、可能にした。

 ところが、今回は定数の過半数に満たない候補者の擁立しかできなかった。共倒れを避けるため、維新との選挙協力も試みたものの、候補がいない空白区では比例票の掘り起こしが進まなかったのではないか。

 政権交代を念頭に置いていた有権者にしてみれば、選択肢が突如消えたという見方もできよう。安倍政権の経済政策、アベノミクスを批判する一方で、数値目標や財源を明らかにした対案を示せなかったのも響いた。

 海江田代表の辞任はやむを得まい。後任を決める代表選では、他の野党を巻き込んだ再編か、自力による立て直しか、議論が戦わされることになろう。

 今の選挙制度でもう一度政権交代を目指すには、野党の結集が一つの道だ。維新、次世代の党、生活の党なども今回、「第三極」になり得なかった。

 それぞれの解党による新党を目指すのか、連立政権を前提にした欧州スタイルの政党連合なのか、あるいはそれ以外の手法か。議論を始めてはどうか。

 そのためには政策を擦り合わせて与党との対立軸を明確にし、一致できない政策は棚上げすることだろう。政局に機敏に対応できるよう、常日ごろから備えておくべきだ。

 野党は自力による立て直しの道を選ぶなら、政策もさることながら人材の掘り起こしを急がなければなるまい。「風」頼みではなく、粘り強く有権者と向き合うことが求められる。

 ただ、党利党略が見え隠れするような生き残り合戦には有権者もへきえきしていよう。最近の野党の離合集散劇は支持層の流動化につながり、与党を利する結果を招いたのではないか。

 政権交代を現実に目指す野党を再建するのか、「1強政治」に歯止めをかける抵抗勢力の結集に徹するのか。いずれにせよ、日本の政党政治の根幹に関わる問題が噴き出している。まずは野党の行動を待ちたい。

(2014年12月16日朝刊掲載)

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