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安倍政権へ厳しい目線 衆院選 中国地方 有権者の声 

自公勝ち過ぎ/地方へ恩恵を 復興策急いで/9条変えるな

 自民、公明両党が3分の2を上回る議席を獲得し、安倍政権の継続が決まった衆院選。一夜明けた15日、中国地方の有権者に選挙結果への思いや、政権に対する要望を聞いた。

 広島市西区の無職佐々木義則さん(67)は「想像した以上に自公が取り過ぎた印象。まさか3分の2も取るとは」と驚く。下松市の会社員兼森伸二さん(45)は「野党の勢いが感じられず緊張感のない選挙だった」と残念がる。安芸区の会社員野村伸二さん(42)は「政権が頻繁に代わると政策の効果が見えなくなる。まずは政権を安定させ、いまよりましな世の中になるよう見守りたい」と話した。

 安倍晋三首相は、今回の衆院選を「経済政策アベノミクスの是非を問う選挙」と位置付けた。「地方には恩恵がない。大企業や都市部ばかりに目を向けるのではなく、社会保障の充実など、高齢化が進む地方への対応を」と求めるのは浜田市の無職原田俊昭さん(75)。尾道市の主婦松浦千種さん(58)も「国民が何に苦しんでいるか、生活の実態を知った上で政策を進めるべきだ」と注文する。

 広島市の土砂災害の被災地では、防災・復興について論戦が交わされた。自宅が床下浸水した安佐南区の無職花戸孝義さん(71)は「砂防ダムや広域避難路を早く整備してほしい」。自宅が大規模半壊した安佐北区の東原町内会の森田年和会長(66)も「自宅で暮らせるようになったばかりで、選挙を気に掛ける間はなかった。被災地復興をアピールした自民党の動きを注視する」と話す。

 若年層を中心に投票率の低下にも注目が集まった。中国地方では5県全てで投票率が戦後最低となった。三次市の農業今田耕造さん(86)は「特に若い人は投票した候補が当選し、地域が変わった経験が少ないのだろう。選挙に行きたくなるような身近な政治を心掛けて」と求めた。

 安倍政権は7月、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定に踏み切り、戦後日本の安全保障政策が大きく転換した。海上自衛隊呉基地がある呉市のパート従業員中西美代子さん(78)は「集団的自衛権など安保政策について、自民党は選挙でほとんど触れなかった。国民の理解が得られたと勘違いしないでほしい」。西区の主婦米倉愛さん(35)も「自民党が勝ったからといって国民は全てを白紙委任したわけではない」ときっぱり。

 岩国市の畳店経営八木主計(かずえ)さん(54)は「集団的自衛権など詳しい中身が国民に知らされないまま話が進んでいる印象。国民の意見をしっかり聞くべきだ」とくぎを刺した。

 安倍首相は選挙後の発言で、憲法改正への意欲をにじませた。西区の無職渡辺彩さん(25)は「平和の象徴である憲法9条は変えてほしくない」。安芸区の主婦叶原チエ子さん(82)は「連立政権を担う公明党がブレーキ役として歯止めをかけてほしい」と訴える。福山市の保育士内藤由美さん(44)は「どんなことでも強引な決め方は避け、いろんな意見をくみ取って」と願う。

(2014年12月16日朝刊掲載)

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