×

社説・コラム

天風録 「沈黙を我慢できず」

 ガマンとは少々砕けて子供を指すフランス語。「子供(ガマン)はみな我慢しなきゃ、と十歳の吾子(あこ)の駄洒落(だじゃれ)をわれのみ解す」。かの国に嫁ぎ、反核運動を続ける日本人女性、美帆シボさんの歌集に拾う。今の日本の子なら、どんな我慢が要るだろう▲世界には、将来を夢見ることさえ我慢させられる、あまたの子がいる。ノーベル平和賞を受けたマララさんの友は医師になりたかったのに、12歳で嫁がされた。彼女への思いが、あの堂々たるオスロ演説の奥底にある▲そのマララさんを襲ったのと同じ勢力だ。パキスタン・ペシャワルの学校にテロ集団が白昼侵入し、130人以上の生徒が犠牲になった。緑の制服を赤く染めた被害者の姿が痛々しい▲軍が運営するが、軍人を育てる学校ではなさそうだ。遊びたい盛り、居眠りしそうになるかもしれない。それを我慢し教科書を開いていた普通の子たちだろう。どんな理屈を付けようと、ジェノサイドと言うしかない▲マララさんが10歳の時、郷里では400以上の学校が破壊された。だが沈黙することに我慢できず、声を上げた。受賞演説にある素朴な訴えを引こう。なぜ銃を渡すのは簡単なのに、本を与えるのは大変なのか―。

(2014年12月18日朝刊掲載)

年別アーカイブ