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<解説>福島第1原発 核燃料制御 手詰まり 「スリーマイル」超す事態

■経済部長 宮田俊範

 福島第1原発で連鎖反応のように起きている事故。施設内で「身体に影響を及ぼす可能性がある」(枝野幸男官房長官)放射線量を検出し、地震5日目を迎えても核燃料の制御が極めて難しい状況にあることを示す。世界の原子力史上でも、米スリーマイルアイランド原発事故を上回るような過酷事故(シビアアクシデント)の段階に至ったといえる。

 炉心溶融が起きた2号機では、原子炉格納容器下部にある圧力抑制室が破損。放射性物質を内部に閉じ込める多重防護システムの「5重の壁」のうち、原子炉圧力容器を除く壁が壊れてしまい、放射性物質の大量放出の懸念が高まる。

 さらに厳しいのは、定期点検で停止していた4号機の火災だ。東京電力によると、使用済み核燃料を納めていたプールの水が高温になって水素が発生し、爆発したとみられる。

 プールは格納容器外にあり、放射性物質の外部放出を防ぐのは原子炉建屋しかない。これも外部電源が失われてプールへの水補給ができなかったのが原因であり、安全なはずの停止中の原子炉事故は想定外。原子力関係者の衝撃も大きい。

 施設内では、1時間あたりの放射線量が最高400ミリシーベルトと、これまでとは桁違いの数値を記録している。枝野長官は、この放射線量の上昇は「4号機の影響が大きい」と述べた。

 原発の安全性を保つ「止める」「冷やす」「閉じ込める」機能。そのうち放射性物質を外部放出させないことが最重要だが、「閉じ込める」機能が日々失われている。

 次々に異常が生じ、事態がエスカレートする中、現時点で想定される最悪の事態としては、原子炉内での水蒸気爆発によって「最後の壁」である圧力容器が損傷して大量の放射性物質が放出されることや、メルトダウン(全炉心溶融)で核分裂が再び始まる「再臨界」などがある。

 とにかくこれ以上、核燃料を露出させないことが肝心だ。半ば手詰まりの中で、廃炉も覚悟で炉心やプールに水(海水)を注入し続けるしか方法がない。同時に作業員が被曝(ひばく)する危険性を伴うことも忘れてはならない。

(2011年3月16日朝刊掲載)

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