×

ニュース

福島第1原発事故 ヒロシマや原発のまちに衝撃

 東京電力福島第1原発で外部への放射能漏れの可能性が高まった事態を受け、中国地方では、被爆者や原発を抱える地域の住民たちに衝撃と怒りが広がった。国や東電に情報公開や原因究明を求める声も上がった。

 広島県被団協の金子一士理事長(85)は「原爆の被害を経験した国が被曝(ひばく)者を出すという、あってはならないことが起きた」と憤る。「国は責任を持って被災者の命を守るべきだ」と強調した。もう一つの県被団協(坪井直理事長)の木谷光太事務局長は「もう制御がきかない状態では。制御する技術がないことがいちばん問題だ」とする。

 チェルノブイリの周辺住民の検診活動に取り組んできた武市宣雄医師(65)=広島市南区=は「小出しに避難指示する方がかえって住民の不安は募る。原子炉の状態や放射性物質の飛散範囲の情報を正直に開示し、半径30キロに限定せず避難させるべきだ」と指摘する。

 広島市中区の平和公園近くで無職坂田利造さん(80)は「放射能の恐怖は原爆と同じ。安全神話は崩れた」と怒りをあらわにした。

 中国地方で唯一の原発、島根原発がある松江市。自営業三島豊さん(67)は「原発と自宅は10キロも離れていない。正直、怖い」。同市の飲食店経営三島ひろこさん(60)は原発の地震対策に対し「万全というが、不信感が増した」と表情を曇らせた。

 原発建設計画がある山口県上関町に近い周防大島町の主婦山田めぐみさん(38)は「子どもの健康への影響も計り知れない」と計画中止は避けられないとみる。光市のシロアリ駆除業、吉岡宏治さん(44)は「推進派の人も慎重になるのでは。行政や電力会社は安全性を調査し直す必要がある」と注文した。

(2011年3月16日朝刊掲載)

年別アーカイブ