×

ニュース

原医研・星教授に聞く 「1.6キロで被爆」に相当

■記者 藤村潤平

 東京電力福島第1原発事故は15日、3号機付近で毎時400ミリシーベルトという高い放射線量を観測した。この数値が持つ意味や、放射線が人体に与える影響について、広島大原爆放射線医科学研究所(原医研、広島市南区)の星正治教授(63)に聞いた。

 ―400ミリシーベルトの放射線を被曝するとどうなりますか。
 発がんの発生リスクが上がり、血液中のリンパ球が減少するなどの急性症状が起きる。広島原爆に当てはめると、爆心地から約1.6キロで被爆したのに相当する被曝線量だ。原爆の場合と違って熱線や爆風の被害はないが、とんでもない数値といえる。1986年のチェルノブイリ原発事故に次ぐ深刻さだ。

 ―原発の周辺地域への影響は。
 放射線は原子炉内に閉じこめられている。観測されているのは、燃えかすなどの放射性物質を含んだガスやちりが外に出ているからだ。風に乗って広範囲に広がる。そのため、遠方への避難や屋内待機が必要になる。

 ―政府は、原発の半径20キロ以内の住民を避難させ、20~30キロでは屋内待機を指示しました。
 妥当な判断だ。30キロ以上離れれば、放射性物質の拡散や放射能の強さが弱まり、数値は千分の1以下になる。人体への影響は考える必要はない。屋内待機を指示されている20~30キロでは、外に出ないのがベストだが、花粉症対策のようにマスクなどを着用し肌を外気にさらさなければいい。東京などで微量の放射性物質が観測されているが問題ない。

 ただ、同水準の放射能漏れが持続し、同じ風向きが続くとよくない。住民の不安を取り除くことも大事だ。そのためにも国はもっと頻繁に情報提供しないといけない。400ミリシーベルトの数値が発表されたが、その後の細かな数値の変動は伝わってこなかった。これでは私たち専門家も判断できない。結果的に不安をあおることになる。

ほし・まさはる氏
 広島大原爆放射能医学研究所助手、助教授を経て1994年から現職。2000年から今年1月まで原子力安全委員会緊急事態応急対策調査委員を務めた。専門は放射線物理学。

(2011年3月16日朝刊掲載)

年別アーカイブ