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社説・コラム

広島訪問 「可能性ある」 任期残り2年余りのオバマ氏 秋山信将・一橋大教授に聞く

 2009年春、チェコ・プラハでの演説で「核兵器なき世界」を掲げたオバマ米大統領。任期を2年余り残しながら、先月の中間選挙で与党民主党が敗北し、レームダック(死に体)化が指摘される。核問題への取り組みを「遺産」として残せるのか。一橋大の秋山信将教授(国際政治学)に聞いた。(田中美千子)

 政権に対する議会の圧力は強まるが、外交面で大きな政策転換はないだろう。野党共和党は、中東の過激派「イスラム国」や、シリア内戦への対応を「弱腰だ」と批判するが、世論は地上軍を投じるような大規模な戦争を望んでいない。日米同盟にも変化はないだろう。共和党の方が、日本を重視しているためだ。

 核問題では、どのような足跡を残せるのか模索しているはずだ。しかし現実には、包括的核実験禁止条約(CTBT)の上院での批准は、共和党の反対で今以上に難しくなる。

 ロシアとは、10年に配備済み戦略核弾頭数を過去最低水準に減らす新戦略兵器削減条約(新START)に調印したが、恐らく次のステップに進めない。ミサイル防衛(MD)や、通常弾頭を使った大陸間弾道ミサイル(ICBM)に力を入れたい米国と、規制したいロシアに隔たりがあるからだ。

 米国は「核兵器なき世界」に向かう姿勢を示そうと、今月、オーストリア・ウィーンであった3回目の「核兵器の非人道性に関する国際会議」へ初めて参加した。ただ、核兵器禁止条約に反対の立場も明言。核軍縮の新たな枠組みを求めず、核拡散防止条約(NPT)体制を維持しながら段階的な核削減を進める姿勢は今後も変えないだろう。

 それでも、理想を追求する姿勢を示すため広島を訪れる可能性はある。15年の戦後70年に合わせるか、日本が主要国首脳会議(サミット)のホストを務める16年か。過去に核兵器保有国の現職首脳の広島訪問はなく、インパクトを残せる。

 プラハ演説が国際社会にもたらした影響は大きい。核兵器の使用は規範に反する、(安全保障上の)役割を減らそうとの流れもできた。「核兵器なき世界」への道のりがなお険しいからこそ、オバマ大統領が被爆地を訪れる意味は大きい。各国の為政者に一線を越える勇気を与える可能性もあるからだ。(談)

(2014年12月24日朝刊掲載)

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