×

連載・特集

追跡2014 中国地方の現場から 島根原発 2号機再稼働 見通せず

 「審査は序盤。今の段階で終了時期を申し上げるのは早い」。原子力規制委員会の更田豊志委員長代理は19日、再稼働に向けた審査を進めている中国電力島根原子力発電所2号機(松江市鹿島町)の現地調査を終え、記者団に語った。

 中電が昨年12月25日、規制委に審査を申請した2号機。1年を経た今も、再稼働の時期が見通せないことを印象付けた。

 2号機は2012年1月、定期検査入りし、停止。10年3月から停止する1号機、ほぼ完成した3号機は、福島第1原発事故以来、動いていない。

 存廃に揺れたのが、3月に運転開始40年を超えた1号機だ。「原則廃炉にするべきだ」。松江市の松浦正敬市長が同26日に表明。翌27日には、中電の苅田知英社長が「廃炉という選択肢もある」と述べた。

 運転40年前後の全国7基について経済産業省は10月、廃炉判断を急ぐよう電力側に要請。廃炉に伴う資産価値の減少を抑える会計ルールも検討中で、島根1号機の判断時期も近い。

 不透明な稼働時期とは裏腹に、早期稼働を目指す中電の強い意志を物語る決断もあった。関西電力への電力販売計画の撤回だ。

 中電は火力電源を調達する関電の入札に応じ、三隅火力発電所2号機(浜田市)の新設前倒しを検討。16年の電力小売り全面自由化を見据えた戦略だったが、原発稼働に理解を示す島根県議会の一部が反発した。「管内の安定供給に原発が必要としながら、域外へ電力を売るのはつじつまが合わない」。こう迫られた中電は原発稼働を優先して11月26日、入札を断念した。

 一方で、地元住民は脱原発の願いを島根県に突きつけた。県民有志でつくる島根原発・エネルギー問題県民連絡会は2月、県内有権者の14・3%に当たる8万3323人分の有効署名を添え、脱原発条例を制定するよう県に直接請求した。

 だが3月に否決。「原発に依存する立地県の苦悩だ」。同連絡会の保母武彦事務局長(72)は悔やむ一方「脱原発の民意は予想以上だった」と2カ月間で集めた署名に手応えを語った。

 原発立地をめぐるカネの問題も表面化した。苅田社長は10月、事故に備える原発30キロ圏の鳥取県に対し、原子力防災に向けた財政支援の検討を表明した。

 島根県は、中電から毎年徴収する核燃料税を見直す過程で、鳥取県への配分を検討した。だが、自社財源が恒常的に立地県以外へ渡るのを嫌う中電の意向などを踏まえ断念。島根県の溝口善兵衛知事から鳥取県との直接交渉を求められた中電が、独自の支援策を検討している。

 15年は、1号機の廃炉判断と2号機の審査の行方が焦点となる。審査が終われば、稼働の是非をめぐる民意の集約方法が問われる。(樋口浩二)

島根原発
 中電は2号機(出力82万キロワット)と3号機(同137万3千キロワット)で早期の再稼働・稼働を目指す。福島第1原発事故を受けた安全工事の投資額は原発敷地内で計2千億円以上。ただ2、3号機が中心で1号機(同46万キロワット)は手つかずの部分も多い。

(2014年12月23日朝刊掲載)

年別アーカイブ