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申請1年「まだ序盤」 島根原発2号機 審査 半数の論点 未着手

 中国電力が原子力規制委員会に、島根原子力発電所2号機(松江市鹿島町)の再稼働に必要な審査を申請して25日で1年を迎えた。これまで25回の審査会合が開かれたものの、中電が想定する主な論点のうち半分以上が未着手。事故を起こした福島第1原発と同じ沸騰水型ということもあり、審査はまだ「序盤」の状況だ。(山本和明、山瀬隆弘、樋口浩二)

 「申請から時間がたつが序盤の段階。議論がまだまだ必要だ」。19日、初の現地調査で島根2号機を訪れた更田(ふけた)豊志委員長代理は、こう説明した。

 この1年間の会合で22ある論点のうち議論に入ったのは火災への対応など10テーマ。「再度説明を」「より詳しいデータを示してほしい」…。会合では規制委側から指摘が相次ぐ。中電が説明を終えたとするのは、どこでも起こり得る地震動の想定だけだ。

 事故時に格納容器の破損を防ぐため沸騰水型に必須となるフィルター付き排気(ベント)設備も、「運用方法も含め議論を続けないといけない」(更田氏)状況にある。

 規制委から断層の長さの根拠が不十分と指摘され、中電は宍道断層など周辺の4活断層の追加調査も実施することになった。近く規制委に結果を説明する方針で、審査が前進する可能性もある。一方で、津波の評価や緊急時対策所など半数以上の12テーマはこれからの議論となる。

 中電は昨年12月の申請以来、原子力部門の社員たち約100人が審査対応に当たる。最大約50人が東京に詰め、多いときで約1300ページもの説明資料を準備する。清水希茂副社長は「できるだけ精密な資料を作って説明する。一歩一歩前進したい」とする。審査の進み具合について「中間地点くらいではないか」とみる別の幹部もいるが、今後の日程は見通しにくい。

 規制委はこれまで島根原発とは異なる加圧水型の審査を優先。同型の川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)と高浜原発3、4号機(福井県)が事実上、合格した。このため、年明けから沸騰水型の審査が加速する可能性もある。

 川内原発の合格までに重ねた会合は62回。沸騰水型は特有の論点もあり、島根2号機の合格時期は見通せない。さらに、その後の地元同意など再稼働に向けた手続きは続く。

 市民団体の平和フォーラムしまね(松江市)の杉谷肇代表は「そもそも福島の事故の検証が不十分な今、規制基準に合格すれば安全が保たれるのか疑問だ」と指摘する。中電には、審査対応に加え、地元住民たちに理解を得る取り組みも求められている。

原発再稼働に向けた審査
 原子力規制委員会が新規制基準に適合しているかを調べる。国内の48基のうち21基が審査中。九州電力川内1、2号機に続き、関西電力高浜3、4号機が事実上合格した。政府は規制委の審査に合格した原発の再稼働を進める方針を掲げている。

(2014年12月25日朝刊掲載)

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