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福島第1原発 続く瀬戸際の攻防 放射線量 注水阻む

■経済部長 宮田俊範

 福島第1原発では今、炉心の核燃料を冷却し、露出も防ぐ注水に加え、プールにある使用済み核燃料にも注水が必要な事態となり、作業がいっそう困難さを増している。使用済み核燃料の放射線量が高く、被曝(ひばく)の危険から近づくことも難しい。一刻も早く作業を進めないと事態が悪化するジレンマの中、放射性物質の拡散防止に向けて瀬戸際の攻防が続く。

 16日のポイントは、3、4号機の使用済み核燃料プールへの注水が成功するかどうかだった。自衛隊がヘリコプターで3号機に散水しようとしたが、放射線量が高くて近づくことができなかった。4号機では、その試みさえできない状況だ。

 これは、そもそも核燃料が核分裂反応を終えた後も当分の間、熱を発し、強い放射線を出し続けるためだ。使用済み核燃料には、毒性の強いプルトニウムをはじめ、さまざまな種類の核分裂生成物が含まれている。

 加えて、原子炉本体には「5重の壁」の多重防護システムがあるが、使用済み核燃料プールでは「3重の壁」にとどまることも一因となっている。

 プールは、原子炉格納容器の外側に設けられている。3、4号機では火災や水素爆発で建屋が崩壊したり、穴が開いたりして、「2重の壁」に劣化した。

 さらには、使用済み核燃料が発する熱で水が蒸発して核燃料が露出し、直接、大気にさらされて放射線が外部に出ている状態とみられる。

 東京電力も16日の会見で、白煙が上がった3号機ではプールで放射能を帯びた水が沸騰し、蒸発した可能性があると説明。定期点検で停止中だった4号機でも、プールの水の循環が停止して、最初の火災前に通常40度程度の水温が84度まで上昇したことが判明している。その後、蒸発が進んだとみられる。

 このほかの原子炉では、1号機は核燃料の一部が溶ける炉心溶融を起こし、海水を注入。2号機は格納容器下部にある圧力抑制室が破損し、メルトダウン(全炉心溶融)の恐れも出て海水が注入されている。3号機でも格納容器の一部が破損した可能性がある。

 定期点検で停止中だった5、6号機は、現時点ではプールの温度が少し上昇しているほかは問題が生じていないという。

 福島第1原発では全6基のうち、4基までが連鎖反応のように事故を起こした。度重なる水素爆発などで放射能汚染が広がり、状況確認と注水作業が難しい状態になっている。中央制御室で原子炉を監視している東電の運転員も、プールの水温や水位など重要データをチェックできないような状態に置かれているようだ。

 特に3、4号機については、最悪の事態として、使用済み核燃料でも核分裂を起こして中性子を生じる「再臨界」を想定する原子力専門家もいる。

 事態はこれまでよりも深刻といえる。3、4号機の使用済み核燃料プールへの注水作業が急がれる中、政府、東電がどう知恵を絞り、実行するか、ぎりぎりの判断が求められる。

(2011年3月17日朝刊掲載)

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