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回顧やまぐち2014 上関原発計画 再開か中止か 見通せず 工事中断4年 対立なお

 福島第1原発事故を受けて、予定地の準備工事がストップした中国電力の上関原発(上関町)建設計画。原発をてこにした町づくりを掲げる上関町は、身動きの取れないまま4度目の冬を迎えた。再開か中止か、決着はいまだ見えず、住民同士の対立は続く。

 14日に投開票された衆院選は、原発活用を掲げる自民党が大勝。全48基の停止から1年余りが経過した国内の原発は、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)が年明け以降、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)が来春以降に再稼働する見通しだ。既設原発は安倍政権の下、着々と息を吹き返しつつある。

強い脱原発世論

 一方、上関原発を含む新増設について政府は判断を示していない。4月に閣議決定されたエネルギー基本計画にも言及はなかった。背景には脱原発依存の根強い世論がある。中国新聞社が衆院選公示後、県内で実施した電話世論調査では上関原発に「反対」が57・1%を占めた。

 公示2日後の4日、山口2区で再選を果たした自民党の岸信夫氏(55)が同町に入った。長島の戸津地区で行った街頭演説には約30人が集まった。「原発はどうなるんかね。動きがないままじゃ町が倒れる」。70代の男性は寒風に身をすくめ、じっと聞き入った。

 工事再開の見通しが立たない中、2月の町議選では推進派の候補者の多くが原発に関する訴えを控えた。投票率は過去最低の86・03%(前回90・24%)。焦点だった中電の公有水面埋め立て免許延長申請の扱いや、県漁協祝島支店(同町)の漁業補償金の配分問題も来年以降に持ち越しとなった。推進派には手詰まり感が漂う。

 準備工事の中断から間もなく4年。推進派の上関町まちづくり連絡協議会の古泉直紀事務局長(56)は「福島の事故前のように原発が動きつつあるのは明るい兆しだ」とみる。岸氏が街頭演説で述べた「新規の原発について来年しっかり議論する」の言葉に望みをつなぐ。政府は来夏までに、原発を含めた将来の電源構成を決める方針でいる。

 一方、上関原発を建てさせない祝島島民の会の清水敏保代表(59)は「政府は原発の活用をさらに進めてくるはずだ」と、警戒を緩めない。3月に山口市で初めて開いた反対集会に7千人(主催者発表)を集めた。来春も開き、脱原発勢力の結集と態勢固めを図る構えだ。

にぎわう道の駅

 今月、町が観光振興の拠点と位置づける道の駅「上関海峡」が開業した。推進、反対両派の農家や漁業者が新鮮な農水産物を出荷。連日のにぎわいぶりは、原発論争に長い年月を費やしてきた半農半漁の町の潜在力を示しているように映る。

 来年はこれまでに両派が激しい選挙戦を繰り広げてきた上関町長選が、9月ごろ実施される。エネルギー政策の行方とともに、現状を踏まえた地元の選択に注目が集まる。(井上龍太郎)

上関原発
 中国電力が上関町長島に計画する改良沸騰水型軽水炉。1、2号機の出力は各137万3千キロワット。埋め立て海域は約14万平方メートルで、県は2008年10月に免許を交付。中電は1年後に着工したが、福島第1原発事故の影響で中断した。免許期限切れ直前の12年10月、3年延長を県に申請。県は期間内に工事を完了できなかった理由などを中電に繰り返し照会。ことし5月には回答期限を1年後とする6度目の補足説明を求め、判断をさらに先送りした。

(2014年12月25日朝刊掲載)

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