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連載・特集

イワクニ2014 <上> 説明乏しく不満噴出 愛宕山米軍施設整備 

 岩国市の愛宕山地域開発事業跡地で5月、国による米軍施設の整備工事が始まった。在日米軍再編に伴い、岩国市の米海兵隊岩国基地には2017年ごろまでに、米海軍厚木基地(神奈川県)から空母艦載機59機が移転する予定だ。その受け入れに向け、愛宕山地区の開発が動きだした。

 愛宕山地区の米軍施設は米軍家族住宅エリア(約28ヘクタール)と運動施設エリア(約16ヘクタール)からなる。家族住宅は270戸程度で、運動施設エリアには野球場や陸上競技場、コミュニティーセンターなどを配置する。

 中国四国防衛局によると、運動施設エリアは原則、身分証などのチェックなしに市民が利用できる形で整備するという。艦載機移転により、隊員や家族計約3800人が移る。

 防衛局は敷地造成工事に先立ち、地元3カ所で説明会を開催した。だが、参加住民の多くが詳細な計画内容や暮らしへの影響を知りたかったのに対し、防衛局側の説明は乏しく不満が噴出した。

 市などは、計画全体についての説明会を開くよう重ねて防衛局に要望。10月末には施設の実施設計が完了しており、防衛局は開催を検討している。

 市は本年度まとめた市総合計画に「米軍基地と共存するまち」を初めて掲げた。国に対し、43項目の安心安全対策や幹線道路網の整備などの地域振興策を要望している。

 福田良彦市長は米軍再編に協力姿勢を示しているが、艦載機移転について「受け入れの判断はその協議の先にある」としている。市民が、暮らしやすさや安心安全を実感できる十分な達成度が問われる。

 一方、11月の沖縄県知事選で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する新知事が誕生した。国はこれまで市などに対し、米軍再編は抑止力の維持と沖縄を中心とする地元負担の軽減が目的だとし、「個別の再編案は全体としてのパッケージ」と説明してきた。

 県と市は「普天間移設の見通しが立たないうちに空母艦載機の移転だけを切り離して進めることは認められない」とのスタンスを堅持。今後、普天間の危険性除去が滞ることになれば、艦載機受け入れの判断に影響する可能性もある。(野田華奈子)

1月

  6日 岩国市の米海兵隊岩国基地の米軍機によるものとみられる騒音苦情が、2、3の両日で市に計11件寄せられていたことが判明。市と海兵隊の確認事項では、正月三が日は「訓練を行わない」となっている▽2013年に市へ寄せられた岩国基地に絡む苦情件数が計2470件に上り、記録のある1977年以降で最多だったことが明らかに

  7日 岸信夫外務副大臣(当時)が、沖縄の基地負担軽減に協力した自治体向けに新たな交付金の創設を目指すと表明

 22日 沖縄県の高良倉吉副知事(当時)が岩国市役所を訪れ、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)のKC130空中給油機の岩国基地移転受け入れに対し、岩国市の福田良彦市長に謝意

 23日 岩国市議会の桑原敏幸議長が沖縄県庁を訪れ、仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事(当時)に沖縄の基地負担軽減を議論するための岩国市議と沖縄県議たちによる協議会立ち上げを提案

2月

  4日 宜野湾市の佐喜真淳市長が岩国市役所を訪れ、米軍普天間飛行場のKC130空中給油機の岩国基地移転受け入れについて福田市長に謝意

 11日 平岡秀夫元法相や岩国市議の有志たちでつくる「ふるさとから基地問題を考える懇話会」が13日までの3日間、沖縄県を訪れ、名護市の稲嶺進市長たちと意見交換

 14日 岩国基地が既存部隊用の新しい格納庫や整備場などを報道陣に公開=写真

 21日 岩国市役所で、岩国基地に関する安心・安全対策を話し合う市、山口県、中国四国防衛局の3者協議

3月

  7日 岩国基地が、5月5日に基地を一般開放する日米親善デーを2年ぶりに開くと発表

 19日 岩国基地で非戦闘員の退避訓練。垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ3機が参加=写真

 29日 韓国の在韓米軍烏山基地周辺で、岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機が低空飛行中、高圧電線に接触。現場付近の約30世帯が一時停電

4月

 18日 岩国基地が日米親善デーの概要を発表。KC130空中給油機などを展示する一方、航空ショーがないなど規模を縮小

 24日 中国四国防衛局が2014年度に発注を予定する岩国基地の関連工事が115件に上ることが判明

 25日 防衛省が、在日米軍司令部が硫黄島(東京)で5月5~16日に予定する原子力空母艦載機の陸上空母離着陸訓練(FCLP)の予備施設の一つに岩国基地を指定したと発表

 28日 広島県、広島市、廿日市市が、岩国基地でFCLPをしないよう求める要請文を駐日米大使たちへ送付

 30日 山口県と岩国市など2市2町でつくる県基地関係県市町連絡協議会が、岩国基地でFCLPをしないよう求める要請文を岸田文雄外相たちへ送付

5月

  5日 岩国基地で日米親善デー。約5万人が来場=写真

 15日 中国四国防衛局が岩国市の愛宕山地域開発事業跡地での米軍住宅と運動施設の造成工事に着手。米軍住宅建設に反対する市民団体が立ちはだかり、一時騒然

 23日 広島県内で13年度に目撃された米軍機とみられる低空飛行は1531件。4年連続で千件を超えたことが判明

 27日 岸外務副大臣(当時)が岩国市と山口県を訪れ、KC130空中給油機15機の岩国基地移転を7月上旬から8月下旬にかけて行う見通しを伝達

6月

 23日 KC130空中給油機の岩国基地移転が7月8日から始まる見通しが明らかに▽岩国市議会が、沖縄の基地負担軽減を図るための決議案を賛成多数で可決

 30日 愛宕山跡地の米軍家族住宅や運動施設の実施設計が、予定より4カ月遅れて10月末にずれ込む見通しが明らかに▽KC130空中給油機の岩国基地移転について、山口県の村岡嗣政知事は県議会で「運用や騒音の状況把握に努め、国に言うべきことは言う姿勢で対処する」と述べる

(2014年12月29日朝刊掲載)

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