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社説・コラム

2014政界を振り返る 中国地方選出議員の動き 

与党大勝 長期政権へ道筋

 自民党の「1強」が続いた2014年の政界。安倍晋三首相(山口4区)は、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定や原発再稼働など、世論が割れる政策を推し進めた。そして自身の経済政策「アベノミクス」を争点に掲げて解散、師走の衆院選を仕掛けた。与党の大勝に終わり、首相は求心力を高めて長期政権への足場を固めた。中国地方選出の国会議員の動きを中心に、永田町のこの一年を振り返る。(城戸収、坂田茂、藤村潤平)

■総選挙

中国地方も自民「1強」

 安倍首相が消費税増税を先送りし、アベノミクスの継続を問うた12月の衆院選。自民党が「1強」を維持し、公明党と合わせて定数の3分の2(317)を上回る325議席を確保した。

 投開票日の14日夜、候補者の名前が並ぶボードが赤いバラで埋め尽くされた自民党本部。首相は「2年間の安倍政権に信任をいただいた」と勝利宣言した。高村正彦副総裁(山口1区)や細田博之幹事長代行(島根1区)、溝手顕正参院議員会長(参院広島)たち党幹部とともに大勝を喜び合った。

 中国地方も「1強」は変わらなかった。5県の20小選挙区は、2012年の前回衆院選でも勝利した党公認の18人が議席を守った。細田氏は「地方には景気の波が十分来ていない。消費税再増税の先送りのインパクトが大きかった」と勝因を分析した。

 残る2小選挙区は、無所属の亀井静香氏(広島6区)と次世代の党の平沼赳夫氏(岡山3区)がベテランの底力を見せて勝利。全小選挙区で当選者が前回と同じ顔ぶれになった。

 比例代表中国ブロック(定数11)では、与党は自民党5議席、公明党2議席と前回の議席を維持。民主党は、大敗した前回と同じく2議席の確保にとどまった。岡山2区で敗れた津村啓介、同4区で敗れた柚木道義の両氏が再び復活当選したが、政権時代に失った信頼の大きさがあらためて浮き彫りとなった。

 共産党は03年に失った1議席を回復し、大平喜信氏が初当選。安倍政権の批判票の受け皿となって躍進した党の勢いは中国地方にも現れた。

 前回2議席を得た日本維新の会が解党し、設立された維新の党と次世代の党。維新の党は1議席を獲得し、高井崇志氏が復活当選。一方、次世代の党は議席ゼロに終わり、比例前職だった中丸啓、坂元大輔の両氏が落選。両党の明暗は分かれた。

■第3次安倍内閣

岸田・宮沢氏ら再任

 安倍首相は24日、衆院選を受けた特別国会で第97代首相に選出され、第3次安倍内閣を発足させた。

 第3次内閣では、中国地方から、岸田文雄外相(広島1区)▽宮沢洋一経済産業相(参院広島)▽竹下亘復興相(島根2区)▽石破茂地方創生担当相(鳥取1区)―の4人が再任された。

 第2次安倍内閣の発足時から外相を務める岸田氏は3年目に突入。竹下氏は9月の内閣改造で初入閣を果たした。同じ内閣改造で、首相は石破氏を自民党幹事長から外して地方創生担当相に充てた。その処遇に、次期党総裁選をめぐる首相の思惑がにじんだ。

 一方、首相は内閣改造から間もない11月に衆院を解散。その引き金の一つは「政治とカネ」の問題だった。

 内閣改造後の10月、経産相の小渕優子、法相の松島みどり両氏がダブル辞任。早期収拾を図ろうとした首相の思惑とは裏腹に、「政治とカネ」問題は他の閣僚に拡散した。小渕氏の後任として初入閣した宮沢氏には、広島市中区のSMバーへの政治活動費支出などが発覚。野党は追及を強め、秋の臨時国会はスキャンダル国会の様相を深めた。

 11月末に公表された2013年分の政治資金収支報告書でも、林芳正氏(参院山口)の資金管理団体がウニを、竹下氏の団体が酒やたばこなどをそれぞれ購入していたことが判明。政治資金の使途の在り方は課題を残したままだ。

■「多弱」の野党

離合集散 対抗できず

 自民党優位の「1強多弱」の政治風景は当面続きそうだ。野党は離合集散し、巨大与党への対抗勢力となり得なかった。野党第1党の民主党や維新の党が軸になり、衆院選で一定の協力関係を築いたものの、苦戦した。

 衆院選で伸び悩んだ民主党。海江田万里代表は落選し、辞任を表明。同党の森本真治氏(参院広島)は「結果が全て。あらためて党が厳しい状況に置かれているのを実感した」と振り返る。

 海江田氏をめぐっては、党勢の低迷から交代論がくすぶり続けた。野党再編に慎重な海江田氏に対し、柚木道義氏たちの再編を求める声もあり、路線対立が鮮明化した。

 海江田氏辞任に伴う2015年1月の代表選では、党再建の在り方が最大の焦点になる。代表選は、野党再編に前向きな動きを見せてきた細野豪志元幹事長と、自主再建を指向する岡田克也代表代行を軸に展開する見通し。その結果は、今後の野党の動向を左右しそうだ。

 12年の前回衆院選で躍進した日本維新の会は6月、憲法観をめぐる問題を発端に分裂。平沼赳夫氏は「自主憲法の制定を目指す」と次世代の党を8月に結党し、党首に就任。衆院選ではしかし、知名度不足もあって惨敗した。13年から無所属だった浜田和幸氏(参院鳥取)は11月、「歴史観が似ている」と同党入りした。

 一方、岡山県が地盤の片山虎之助氏(参院比例)は、維新の会を前身とする維新の党に参加。同党も衆院選で議席を減らした。

■集団的自衛権

戦後安保の転換点

 政府は7月、憲法解釈を変更し、自国が攻撃を受けていなくても他国への攻撃を実力で阻止する集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。行使を禁じてきた戦後日本の安全保障政策の転換点となった。

 安倍首相が設置した安保法制懇は5月、行使を認める報告書を提出。その前に本格化した自民党内の議論では、慎重論はあったもののすぐに沈静化。「軽武装、経済優先」を旗印としてきた自民党岸田派などの「ハト派」は存在感を示せなかった。「平和の党」を看板に掲げ、慎重姿勢を見せていた公明党も最終的には閣議決定を認めた。

 自民党内や与党間の協議を主導したのが自民党の高村正彦副総裁。首相の意向を踏まえて閣議決定案をまとめる中心的な役割を担った。「解釈改憲ではなく憲法解釈の適正化。憲法の法理は維持する」と強調した。

 野党は今も賛否が割れる。民主党の江田五月最高顧問(参院岡山)は「行使を認めないことは国公認の憲法解釈であり、憲法規範だ」と厳しく非難するが、党内には行使を容認する意見もある。

 首相は24日、第3次内閣発足後の記者会見で、閣議決定を踏まえた安全保障関連法案を2015年の次期通常国会で成立させると明言。宿願である憲法改正についても「歴史的なチャレンジと言ってもよい」としつつ意欲を示した。

 長期政権を見据える中で、首相は「安倍カラー」の強い政策の実現に向け、アクセルを踏み込む構えを見せる。「与党内でバランスを取る公明党の役割はさらに大きくなる」。衆院選後、公明党の斉藤鉄夫幹事長代行(比例中国)はそう強調した。

(2014年12月30日朝刊掲載)

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