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連載・特集

イワクニ2014 <下> 米軍再編へ動き活発化 空中給油機部隊移転 

 岩国市の米海兵隊岩国基地に8月、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)のKC130空中給油機部隊が移転した。愛宕山地域開発事業跡地では米軍住宅などの整備も始まった。岩国が極東最大級の基地へと確実に拠点性を高めていく、在日米軍再編の動きが活発化した一年になった。

 普天間返還合意以降で初となる本土への部隊移転。7月15日から8月下旬にかけ、計15機とともに隊員や家族たち約870人も移った。岩国基地内では年末になっても、再編関連工事が急ピッチで進んでいる。

 計画では岩国基地の負担を緩和するため、給油機部隊の訓練や運用は海上自衛隊鹿屋基地(鹿児島県鹿屋市)、グアムとのローテーションで定期的に実施される予定だ。現在、日米間で具体的な内容を協議しており、2017年ごろまでに予定される米海軍厚木基地(神奈川県)からの空母艦載機移転までには終える。

 給油機移転は1996年、沖縄の基地負担軽減を目的に設置された日米特別行動委員会(SACO)で合意。市は97年に容認していた。給油機の移転完了を踏まえ、福田良彦市長と村岡嗣政知事は、安全確保を徹底するようあらためて国などに求めた。

 米軍側は、給油機部隊が災害支援や不測の事態に優れた能力を発揮するとし、移転の意義について「日米同盟やパートナー国を支える上でより即応性が高まる」と説明する。

 一方、政府は岩国基地への給油機移転を「沖縄の負担軽減」の実績として位置付ける。菅義偉官房長官は9月に岩国市を訪れた際、再編で基地負担が増える都道府県を対象とした新交付金制度の15年度創設に意欲を示した。県は、道路、港湾の整備や観光振興など複数市町にまたがる施策の財源とするよう求めている。

 ただ、「負担軽減」は名ばかりとの指摘も沖縄県民や岩国市民の一部にある。米軍は沖縄に拠点を置く海兵隊地上部隊と関連する任務により、給油機が引き続き普天間飛行場や嘉手納飛行場、沖縄上空などを使用すると明言。岩国基地に移転後、普天間飛行場での目撃例もある。

 給油機に限らず、市民の安全確保の観点から今後の運用を注視していく必要が一層強まっている。(野田華奈子)

7月

  7日 岩国市の米海兵隊岩国基地が、8日に予定していたKC130空中給油機の移転を台風接近で中止すると発表

 11日 岩国市の海上自衛隊岩国基地で、第71航空隊の救難飛行艇US2などの出動回数千回を記念する式典

 12日 岩国市の愛宕山地域開発事業跡地での米軍住宅建設などに反対する市民集会=写真。約500人がデモ行進

 15日 KC130空中給油機の岩国移転開始。本土に沖縄の米軍部隊が移るのは、日米両政府が1996年に普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の返還に合意して以降初

 21日 政府が、在日米軍再編で基地負担が増える都道府県を対象に、交付金を支給する新制度を創設する検討を始めたことが明らかに

 31日 岩国市の福田良彦市長が米原子力空母ジョージ・ワシントンでの着艦訓練を視察

8月

  7日 米軍機の故障による滑走路閉鎖で、岩国錦帯橋空港の全日空機2便が欠航

 14日 米海兵隊岩国基地の隊員36人が、6日の豪雨で被害を受けた岩国市砂山町で土砂撤去のボランティアに参加=写真

 26日 岩国基地がKC130空中給油機15機の移転完了を発表

 29日 小野寺五典防衛相(当時)が岩国市と山口県を訪れ、KC130空中給油機移転完了に対し謝意=写真

9月

  9日 米軍嘉手納基地(沖縄県)で4日にAV8Bハリアー攻撃機が出火したのを受け、岩国市と山口県が岩国基地などに安全対策の徹底を要請

 12日 2010年9月、岩国市内で岩国基地の軍属女性の乗用車にはねられて亡くなった男性の遺族が、女性と国に約8900万円の損害賠償を求めた訴訟で山口地裁岩国支部が判決。国に3400万円の支払いを命じる

 18日 菅義偉官房長官が岩国市を訪れ、在日米軍再編で基地負担が増える都道府県を対象とした新交付金制度の15年度創設に意欲を示す▽大竹市議会が、沖縄の基地負担軽減を図るための決議案を可決

 19日 周防大島町議会が、沖縄の基地負担軽減を図るための決議案を可決

 22日 山口県の村岡嗣政知事が岩国基地や愛宕山跡地を視察。マイケル・カレイロ岩国基地副司令官に騒音対策などを要請

 25日 和木町議会が、沖縄の基地負担軽減を図るための決議案を可決

 30日 県が、岩国基地が地元に及ぼす13年度の経済効果を「少なくとも370億円」とする試算を示す

10月

  9日 岩国市など岩国基地周辺の4市町議会の議長たちが官邸で菅官房長官と会談し、沖縄の基地負担軽減に向けて本土への米軍機能分散などを検討する協議会の設置を要望

 26日 岩国市議選が投開票され、新市議32人が決まる。うち17人が艦載機移転に容認姿勢

11月

  6日 神奈川県の黒岩祐治知事が、米軍厚木基地の空母艦載機を早期に岩国基地に移転するよう求める要望書を中山泰秀外務副大臣に提出

 16日 沖縄県知事選で、米軍普天間飛行場の同県名護市辺野古への移設に反対する前那覇市長翁長雄志(おなが・たけし)氏が当選

 30日 長崎県警佐世保署が、酒に酔って男性を殴った暴行の疑いで岩国基地所属の伍長を現行犯逮捕

12月

 14日 大竹署が、コンビニ店で下半身を露出した公然わいせつの疑いで岩国基地所属の3等軍曹を現行犯逮捕

KC130空中給油機
 空中や地上で、米海兵隊と米海軍の航空機に給油する任務のほか、部隊や物資の輸送に当たる。機内や外付けのタンクからホースを通じて燃料を送る。最大輸送人員は92人。短い滑走距離での発着が可能という。米軍普天間飛行場には垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ24機に次いで多い15機が配備されていた。米海兵隊岩国基地には移転前にもたびたび飛来していた。

(2014年12月30日朝刊掲載)

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