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2014年広島県内重大ニュース 平和問題/文化

■平和問題

被爆者 20万人割れ

 被爆者数が初めて20万人を割った。3月末時点で19万2719人と、ピーク時のほぼ半数。高齢化が進み、活動が行き詰まる被爆者団体も出ている。

 「あの日」の記憶を次代にどうつなぐのかが差し迫った課題となる中、「最も若い世代」の被爆者が動き始めた。母親のおなかの中で原爆に遭った胎内被爆者。8月、全国連絡会を発足し、広島市で初会合を開いた。

 自らの被爆の記憶はない。放射線の影響に不安を抱きながらも被爆者と名乗るのをためらい、意識にふたをしてきた人もいる。それでも「原爆に苦難を強いられ、戦後を必死に生きた母の姿を語り継がなければ」との思いに駆られている。証言などの活動を進め、来夏、広島で再会する。

 一方、核をめぐる国際情勢に好転の兆しは見えない。4月、日本など核兵器を持たない12カ国でつくる「軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)」の外相会合が日本では初めて、広島市南区で開かれた。被爆地での非核外交に期待が高まったが「広島宣言」は核兵器の非合法化について触れなかった。日本をはじめ、米国の同盟国が「核の傘」に頼る動かしがたい現実を見せつけた。

 来春は、核拡散防止条約(NPT)再検討会議が米国で開かれ、広島の被爆者たちも赴く。8月には国連軍縮会議が19年ぶりに広島市で開かれ、各国政府高官の来訪も予想される。ヒロシマの訴えは響くのか。被爆70年は正念場の年でもある。(田中美千子)

■文化

作曲者偽装が発覚

 広島ゆかりの作家が輝いた。広島市佐伯区出身の小山田浩子が小説「穴」で県出身者初の芥川賞。安佐南区育ちの和田竜(りょう)は「村上海賊の娘」で本屋大賞に。被爆2世の朽木祥は「光のうつしえ」で福田清人賞など。広島文学資料保全の会は、峠三吉らの直筆資料を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産に登録しようと始動した。

 耳が聞こえない被爆2世の作曲家として知られた佐村河内守(佐伯区出身)の作曲者偽装が2月に発覚。夏の広島国際アニメショーンフェスティバルは30周年を迎え、指揮者大植英次(同区出身)が呼び掛けた「威風堂々クラシック」は2年目で規模を拡大した。

 美術館では、近隣館との交換展など知恵を絞った企画が目立った。廿日市市の海の見える杜(もり)美術館は所蔵品の中に、日本画の竹内栖鳳が展覧会に出した唯一の油絵「スエズ景色」を確認。113年ぶりの公開となった。

 福山市の御領遺跡の土器片に、卑弥呼時代の交易船とみられる絵が線刻されていた。船倉のある船の絵では国内最古。旧日本軍の毒ガス製造拠点だった竹原市の大久野島で戦後間もなく、米陸軍部隊が化学物質を処理した実態が米軍文書から判明した。(林淳一郎)

(2014年12月29日、30日朝刊掲載)

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