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社説・コラム

天風録 「大みそか」

 <大みそか定めなき世の定めかな>。井原西鶴の句を引くまでもなく、泣いても笑っても、きょう限り。ゆく年のやり残しは、来る年の目標に積み増すしかない。そうして年々なすべきことが雪だるま式に膨らんでいく▲ならば1日早く元旦の計を考えても、鬼は笑うまい。広島の私たちにとって、まずは自然災害への備えだ。この夏の痛ましい記憶を胸に刻みつつ、すわという時にどう行動するか。心構えが整うまで待ってはくれない▲明けて被爆70年である。核実験を除けば広島と長崎以降、人類の頭上で核爆発は起きなかった。この先も71、72年と続けたい。いやむしろ、核兵器廃絶「元年」を一年でも早く迎えたい▲集団的自衛権の行使容認がどう響くだろう。「核の傘」を差し掛けてくれる同盟国が困ったら、こちらも手を差し伸べる。お互いさまとの考え方はあろう。だが傘の閉じ方を議論しなければ、核なき世界は近づかない▲誰もが健やかに過ごし、周りへの思いやりを決して忘れず、景気回復の実感が等しく行き渡り、世代を問わず先行きに明るい希望が持てる社会をつくり…。「世の定め」にしたい目標は数えきれない。日々を大切に、よい一年を。

(2014年12月31日朝刊掲載)

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