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社説・コラム

天風録 「年頭の誓い」

 暖かな毛で全身をくるみ、とがった角をカールしたものも。なるほどおとなしそうである。ヒツジの姿から未(ひつじ)年生まれの性格は語られるようだ。年男年女でない人もあやかって穏やかな一年を送りたい▲初詣に急ぐ人もあるだろう。ヒツジに倣い、ゆっくり参ることにして読書でもいかが。目の覚める言葉にも出合う。「拝むなら自分を拝め。/賽銭(さいせん)出すなら自分に渡せ。/自分をいたわれ。/自分こそ一切の原点。」▲あす100歳になるジャーナリストむのたけじさんが記している。一日一言をつづった本の初め、元日の項にある。人に頼らず考えよとの警句か。ヒツジを数えて寝正月と決め込んでいた身も背筋がぴんと伸びるよう▲ことしは戦後70年の節目。この国の来し方、行く末を見つめたい。今、暮らしの先行きは曇る。新年早々値上げラッシュらしい。社会が進む方向に目を凝らし、自分をしっかり持たなくては。一年の計をどう立てよう▲「笑うべき時に大口あけて笑うことを誓う」。年男の詩人谷川俊太郎さんの作品「年頭の誓い」には含意のある、とがった約束が並ぶ。「天下国家を空論せぬこと」も。これら至言を懐に真っすぐ歩むと、こたつで誓う。

(2015年1月1日朝刊掲載)

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