×

ニュース

福島原発事故 広島大チーム同行ルポ 被曝の不安 検査に列

■記者 山内雅弥

 東日本大震災から1週間が過ぎた。被害を受けた東京電力福島第1原発の事故は終息のめどさえ立たない。放射能汚染に対する住民の不安も広がるばかりだ。17日から住民の放射線測定や医療支援に当たる広島大の緊急被ばく医療チームに同行し、現地の避難所を訪ねた。

 日が傾き、しんしんと冷え込んできた。福島県川俣町の旧小島小の教室や講堂を利用して設けられた避難所。「きょうはもう検査してもらえねんですか」。引き揚げようとしていた一行に声を掛けてきた人がいる。

 原発のある双葉町から家族で避難している女性(83)。やがて避難所に戻ってくる孫娘も測定してもらえないかという。「ちょうど妊娠5カ月。避難指示が出て近くの富岡町から逃れる途中、外を歩いたようなので心配でたまらない」と漏らした。

 広島大原医研内科の三原圭一朗助教をリーダーに医師、看護師、放射線技師の6人。ユニホームの大学名を見て「わざわざ来ていただき、ありがとうございます」と手を合わせる人もいた。被爆者医療の蓄積がある広島大への期待をひしひしと感じた。

 どの避難所でもたちまち長い列ができた。お年寄りが多く、親子で測定を受ける姿も珍しくない。頭から首、肩、足、手という具合に測定していく。時間は1人3、4分。受ける人が気にしないようにピッピッという音を消している。

 この日測定した340人の中に、シャワーなどで汚染を洗い流す除染が必要な人はいなかった。全体でも今のところ健康障害が懸念されるようなレベルの住民の被曝(ひばく)は出ていない。

 測定器の前に子どものコートを差し出した母親もいた。「爆発や火災が相次いだ15日に傘をささなかったから」。大丈夫と言われると、ようやくほっとした表情になった。

 県の災害対策本部では測定を終えた人全員に「スクリーニング済証」を渡している。測定は、住民の健康不安を除くのも狙いだ。ところが避難所や病院に行くときに、提示を求められるケースが少なくないという。

 仮に被曝していても、周りにいる人が二次被曝する可能性はないと専門家は断言する。正しい情報が共有されていないことが過度の恐怖を駆り立てているような気がしてならない。

 避難を余儀なくされた20キロ圏内には、大地震、大津波そして原発災害と三重の苦しみを背負わされた人も少なくない。「生まれ育った所に帰りたいが、いつのことになるか…」。家を流された男性(63)は途方に暮れる胸のうちを明かした。

(2011年3月19日朝刊掲載)

年別アーカイブ