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『この人』 広島韓国総領事に就任 辛亨根(シン・ヒョングン)さん

■記者 金崎由美

被爆2世 父の思い継ぐ

 被爆2世の総領事として母国との交流の窓口役を担う。「感慨と責任の両方を感じる」。駐広島韓国総領事館(広島市南区)の新しいトップが温和な笑顔を引き締めた。

 父は、韓国原爆被害者協会会長を務めた故辛泳洙(シンヨンス)氏。広島で被爆後に帰国し、1974年に在韓被爆者で初めて被爆者健康手帳を取得するなど在外被爆者運動の先頭に立った。

 「父はいつも、被爆者運動は日韓両国が不幸な歴史を乗り越え、真の親善関係を結ぶ出発点でもある、と話していた」

 来日経験はあるが、日本に赴任したのは初めて。「息子には被爆2世として韓国と広島の懸け橋になってほしい、という父の思いに導かれた」と受け止める。被爆者運動を核兵器廃絶につなげたいとの信念を貫いた父。その強い思いを引き継ぎ「真の親善関係」づくりを担う覚悟だ。そのためにも被爆地の市民と手を携える姿勢を示す。

 3月10日付で就任した総領事としての任務は、管轄する中国5県との交流促進、在日韓国人のサポートなど多岐にわたる。「中国地方は観光資源が豊富だ。情報発信を強化すれば日韓の人的交流はまだ増える」と確信する。外交官33年間のキャリアのうち、中国での赴任は、北京や青島など4度に上る。中国を加えた3カ国の交流拡大にも力を入れる考えだ。

 妻、母と一緒に赴任した。「中国地方の各地を訪れるのを楽しみにしている。父を支えてくれた友人と交流を深めたい」と話す。韓国北西部・京畿道の平沢市生まれ。

(2011年3月23日朝刊掲載)

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