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古里・光を執筆拠点に 作家室積光さん 東京からUターン 演劇にも力 不戦を訴え

 漫画化、ドラマ化された「都立水商!」(小学館)で2001年デビューし、「史上最強の内閣」(同)シリーズがロングセラーとなっている作家室積光さん(59)が、東京から出身地の山口県光市にUターンした。「ずっと戻ってきたいと思っていた」と語り、ペンネームにしたほど思い入れのある古里で活動していく。(滝尾明日香)

 光高を卒業後、40年間、東京で過ごした。岩国錦帯橋空港(岩国市)が2012年12月に開港したのを受け、「仕事があれば東京に気軽に行ける」と還暦を前に帰郷を決断。14年10月に生活の拠点を光市に移した。

 同12月、中央公論新社から新刊「江戸オリンピック」が発売された。幕藩体制を維持したまま21世紀を迎えた日本が舞台。伊藤博文はスポーツ用品メーカーで働き、高杉晋作は大手広告代理店に勤務―。現代に生きるスーツ姿の志士たちが江戸に五輪を呼び込もうと画策する。

 軽妙なタッチでエンターテインメント性あふれる物語だが、「暴力を全否定した」とテーマを明かす。「日清、日露、太平洋戦争も起きなかった設定。戦争や革命は世の中を変えるために必要だったかもしれない。それでも戦争がなければ、その後があったかもしれない誰かの人生を考えたい」。叔父を南方戦線で亡くした経験から、表現者として「不戦」を誓う。

 本名の福田勝洋で、20歳から俳優として活動。ドラマ「3年B組金八先生」では体育教師を演じた。1994年に劇団「東京地下鉄劇場」を旗揚げ。中学生向けに戦争をテーマにした演劇を体育館で披露する活動を続ける。戦後70年のことし、中国地方での上演を増やしたいと願う。

 執筆の合間には、白砂青松で知られる室積海岸を歩く。「道が広く、海は近い。都会生活をリタイアした人が年金生活をするにはぴったり」と古里の良さを実感する。「ここを舞台にした作品も発表する」と意気込む。

(2015年1月7日朝刊掲載)

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