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東京の原爆美術展中止 目黒区美術館 「事故と重なる」

■記者 岡田浩平、道面雅量

 東京都の目黒区美術館を運営する区芸術文化振興財団は23日、4月開幕の特別展「原爆を視(み)る1945―1970」の中止を決めた。福島第1原発の事故で首都圏でも平時を上回る放射性物質が検出されるため、「放射線被害を含む原爆と事故のイメージが重なる今は、鑑賞してもらう内容ではない」と判断したという。

 特別展は、制作者がどう原爆に向き合い、見る側はどう作品を受け止めてきたかの検証を通じ、原爆が戦後の日本に与えた影響を見つめ直そうと企画。1945年から26年間に発表された原爆に関する絵画や写真、漫画など約600点を準備した。同館などが主催し、広島、長崎両県市や日本被団協も後援して4月9日~5月29日に開く予定だった。

 田中晴久館長によると、事故を受けて財団で対応を協議。財団理事でもある館長は「被爆からどう復興してきたかを知る意味でも意義は大きい」と開催を主張した。これに対し、他の理事からは「放射能汚染に敏感になっており、鑑賞に来る気になるのか」という意見が多く、この日の理事会で正式に中止を決めた。

 東京都原爆被害者団体協議会(東友会)の飯田マリ子会長(79)は「放射能の恐ろしさを考える機会として、今こそ意義も反響も大きいはず」と疑問を示す。

 洋画家福井芳郎が残した被爆直後のスケッチなど、資料70点余りを貸し出す予定だった原爆資料館(広島市中区)の杉浦信人副館長は「企画書によると大変充実した内容で、期待していた。時期をずらしてでも開催してほしい」と残念がった。

(2011年3月24日朝刊掲載)

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