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社説・コラム

社説 民主党代表選 「1強」対抗の道筋語れ

 当面の日本の政治の流れを占う、と言ってもいいだろう。野党第1党である民主党の代表選がきのう告示された。

 政権の座から転落して2年、海江田万里代表は党立て直しを果たせないまま昨年12月の衆院選で自らが落選した。党として議席を少し伸ばしたものの、有権者の信頼を取り戻したとはお世辞にもいえまい。そもそも受け皿となる立候補者すら、数をそろえられなかった。

 新代表に名乗りを上げた長妻昭氏、細野豪志氏、岡田克也氏は党要職や閣僚を経験した論客である。さすがに強い危機感では一致していよう。共同記者会見で「ラストチャンス」という言葉がしきりに飛び交った。

 3氏はかつての政権運営の失敗をはじめ、ここに至った状況を謙虚に受け止め、反省することから始めてもらいたい。

 自民、公明両党で再び衆院の3分の2を占め、「1強他弱」の構図が強まっている。安倍晋三首相は長期政権への自信を深めつつあろう。しかし小選挙区制は常に政権交代を可能とし、政治に緊張をもたらすはずだ。あるべき姿からは程遠い。

 本来、野党第1党の党首は、首相候補として有権者に選択肢を用意する責任を負う。政権批判の受け皿となる「対立軸」が今度こそ見えてくるかどうか。焦点はそこに尽きよう。

 ただ3候補の記者会見からは意気込みこそ感じたが、物足りなさは否めない。具体的に党をどう変えていくのか、肝心なところが見えにくいからだ。

 大きな論点が党再建の手法であろう。民主の衆院議席は自民の4分の1にすぎず、何をするにも限界がある。あくまで次の国政選挙まで自党の枠組みを守るのか、あるいは野党再編を仕掛けていくのか。

 きのうは「原点回帰」を強調する岡田氏をはじめ、野党第2党の維新の党を相手とする再編にそろって慎重な見解を示した。前向きと目された細野氏も「過去と決別する」としつつ2党合流は難しいと明言した。

 民主の最大の支持母体、連合系の労組が維新と距離を置くことを意識したのかもしれない。しかし支持拡大を目当てに持論を封印するより、もっと本音をぶつけ合ってもらいたい。

 政策面についても同じことがいえよう。アベノミクスの恩恵からこぼれ落ちた生活者の視点に立つ。その点は3氏に共通しているが話を聞く限り、理念の域を出ない。具体的なことは代表になってから、というのではどれほど説得力があろう。

 一方、集団的自衛権の行使などの安全保障政策については、リベラル派に推される長妻氏と他の2氏との温度差が浮き彫りになった感もある。通常国会は「安保国会」ともいわれる。この際、あいまいだった党の方向性を徹底的に議論すべきだ。

 さらに原発政策や消費増税へのスタンスなど党内でぶれたままの問題はほかにも山積する。決して逃げてはならない。

 代表を決する18日の臨時党大会に向け、勝敗の行方は流動的という。党員・サポーター票の動向も鍵を握りそうだ。しかしコップの中の票の争奪戦なら、大方の国民には何の関心もなかろう。開かれた論戦を通じ、どんな国を目指すのかを明確に語る。それが党再生の一歩であることを忘れてはならない。

(2015年1月8日朝刊掲載)

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