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社説・コラム

『ひと・とき』 ジャーナリスト・映画監督 綿井健陽さん 

見続ける戦乱のイラク

 2003年、米英軍の空爆で始まったイラク戦争から10年余り。イラクの政情や治安はなお混迷の中にある。「この間を、生き抜いた人はどう生き抜いたか。亡くなった人はどう亡くなったか」。親交するイラク人家族の姿を軸に、それをリポートした映画「イラク チグリスに浮かぶ平和」が広島市などで公開中だ。

 開戦時、空爆で3人の幼い子どもを失った若い父親と知り合い、友情を深めた。数年の間を置いて現地を訪ねた13年、その家族はどうなっていたか―。「甘い想像は打ち砕かれた」

 映画はイラク人の悲しみや怒りとともに、取材する自身の感情、動揺も映し出す。「この戦争を日本が支持したことを覚えていますか」。かけがえのない友人たちの命の重さを込め、そんな問いを発する。(道面雅量)

(2015年1月9日朝刊掲載)

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