使用済み燃料 増加傾向 島根などの原発 対策急務
11年3月31日
■記者 山本洋子
東京電力の福島第1原発事故は原子炉本体に加え、大量の使用済み核燃料を保管する貯蔵プールが制御不能になり、混乱に輪をかけた。使用済み燃料の貯蔵量は島根原発など全国の原発で増加傾向で、各電力会社は対策を迫られる。
福島の貯蔵プールに注目が集まったのは、津波から4日後の15日。冷却機能がダウンした4号機で水位の低下が判明。水に漬かっているはずの使用済み燃料が露出し、「再臨界」の可能性も否定できない状況になった。
国内の原発の使用済み燃料は年間900~千トンで、多くは各原発のプールに貯蔵する。各原発の貯蔵量は原子炉内の燃料をも上回るケースが多い。
島根原発でも昨年末時点で1号機の貯蔵プールに322体、2号機に1956体を貯蔵。容量の約49%が埋まる。1、2号合計で13カ月に1回の定期検査ごとに220体のペースで増える一方、外部の再処理施設などへの搬出は2008年9月を最後に途絶えたままだ。
背景にあるのは、使用済み燃料のウランやプルトニウムを分離して処分する「核燃料サイクル」の確立の遅れ。中核となるはずだった青森県六ケ所村の再処理工場の稼働は幾度も延期され、当初計画から10年余り過ぎても動いていない。
東電など一部の電力会社は、一時保管用の「中間貯蔵施設」の建設を計画するが、大量の使用済み燃料の大半が未処理で存在する状態は変わらない。
中国電力も、燃料の間隔を詰める「リラッキング」という手法で1号機のプール容量を当初の2倍、2号機は1・5倍にするなど手を打ってきた。だが、定期検査期間も含めて単純計算すると、1、2号機では30年までに容量は限界に達する。
島根県は「原発内の貯蔵量が増え続けるのは好ましくない。今回の事故で、格納容器の外にある貯蔵プールのリスクも明らかになった」と強調する。中電は「貯蔵の在り方が将来の課題であるのは間違いない。まずは万全の安全対策を講じていきたい」としている。
使用済み燃料 核分裂が止まった後も熱を出し続けるため、各原発の貯蔵プールで数年程度かけて冷却される。電気事業連合会によると、国内の使用済み燃料の貯蔵量は1万3530トン・ウラン(2010年9月末時点)で管理容量の66%。福島第1など既に8割を超えた原発も複数ある。
(2011年3月26日朝刊掲載)
東京電力の福島第1原発事故は原子炉本体に加え、大量の使用済み核燃料を保管する貯蔵プールが制御不能になり、混乱に輪をかけた。使用済み燃料の貯蔵量は島根原発など全国の原発で増加傾向で、各電力会社は対策を迫られる。
福島の貯蔵プールに注目が集まったのは、津波から4日後の15日。冷却機能がダウンした4号機で水位の低下が判明。水に漬かっているはずの使用済み燃料が露出し、「再臨界」の可能性も否定できない状況になった。
国内の原発の使用済み燃料は年間900~千トンで、多くは各原発のプールに貯蔵する。各原発の貯蔵量は原子炉内の燃料をも上回るケースが多い。
島根原発でも昨年末時点で1号機の貯蔵プールに322体、2号機に1956体を貯蔵。容量の約49%が埋まる。1、2号合計で13カ月に1回の定期検査ごとに220体のペースで増える一方、外部の再処理施設などへの搬出は2008年9月を最後に途絶えたままだ。
背景にあるのは、使用済み燃料のウランやプルトニウムを分離して処分する「核燃料サイクル」の確立の遅れ。中核となるはずだった青森県六ケ所村の再処理工場の稼働は幾度も延期され、当初計画から10年余り過ぎても動いていない。
東電など一部の電力会社は、一時保管用の「中間貯蔵施設」の建設を計画するが、大量の使用済み燃料の大半が未処理で存在する状態は変わらない。
中国電力も、燃料の間隔を詰める「リラッキング」という手法で1号機のプール容量を当初の2倍、2号機は1・5倍にするなど手を打ってきた。だが、定期検査期間も含めて単純計算すると、1、2号機では30年までに容量は限界に達する。
島根県は「原発内の貯蔵量が増え続けるのは好ましくない。今回の事故で、格納容器の外にある貯蔵プールのリスクも明らかになった」と強調する。中電は「貯蔵の在り方が将来の課題であるのは間違いない。まずは万全の安全対策を講じていきたい」としている。
使用済み燃料 核分裂が止まった後も熱を出し続けるため、各原発の貯蔵プールで数年程度かけて冷却される。電気事業連合会によると、国内の使用済み燃料の貯蔵量は1万3530トン・ウラン(2010年9月末時点)で管理容量の66%。福島第1など既に8割を超えた原発も複数ある。
(2011年3月26日朝刊掲載)