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「原爆の子」NY上映へ 新藤作品 デル・トロさん企画

■編集委員 串信考

 広島市佐伯区出身の新藤兼人監督(98)の映画「原爆の子」が、監督の99歳の誕生日の4月22日から米ニューヨークで上映される。米国での一般上映は初めて。原爆投下国での反応が注目される。

 革命家ゲバラを熱演し、カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞したベニチオ・デル・トロさん(44)が、新藤作品を10本選び、「新藤兼人回顧展」を企画。「原爆の子」はオープニング作品として、監督の代表作「裸の島」とともに最初の1週間、ブルックリンのBAMシネマテークで集中的に上映される。

 「裸の島」を見て感銘を受けたというベニチオ・デル・トロさんが、昨年来日した際に監督に会うなど準備を進めていた。

 「原爆の子」は新藤監督らの独立プロ、近代映画協会が1952年に製作。教師役の故乙羽信子さんが被爆した教え子を訪ねる設定で広島市で多くの市民が協力して撮影された。

 1953年、カンヌ映画祭に出品されたが、米国の意向を受けた外務省が、受賞辞退を図っていたことが外交文書などで明らかになっている。

 回顧展は5月5日まで。「原爆の子」「裸の島」のほかに「第五福竜丸」や故杉村春子さんらが出演する「母」、最新作「一枚のハガキ」などが上映される。

 近代映画協会の新藤次郎社長(62)は「デル・トロさんの映画を選ぶ目は米国で高い評価を得ており、『原爆の子』の初上映など大変意義深い」と話した。

(2011年3月27日朝刊掲載)

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