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社説・コラム

「自信満々」首相を斬る 「ザ・ニュースペーパー」福本さん 衆院選 

 史上最低の投票率だった昨年暮れの衆院選。安倍晋三首相が打ち出した集団的自衛権などの問題は、アベノミクスの陰に隠れた。16日に広島市で公演する社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」で安倍首相を演じる福本ヒデさん(43)=広島県神石高原町出身=に、「安倍1強」の世の中を読み解いてもらった。(石川昌義)

 ―しらけムードも漂う選挙でしたが、コントの材料になりそうですか。
 「安倍のみ、クスッ(笑)」の選挙だった。閣僚の政治資金スキャンダルが続いた選挙前、首相は同じような成り行きで政権を投げ出した過去を思い出したのでは。しかし、不意打ち選挙で与党優位の構図を保ち、不祥事もうやむやにできた。安倍さんの含み笑いが聞こえそうだ。

 ―低投票率とは裏腹に選挙結果は長期政権の一里塚になりそうです。
 小泉純一郎さんの後継として初めて安倍さんが首相になった時、コントの役柄は、悲壮感漂う「ツイてない首相」だった。それが今では自信満々。ただ、向き合う対象がアベノミクスで潤う富裕層や大企業だけのよう。それでも、観客の反応は冷笑よりも「頑張って」の声が大きい。期待は根強いのでは。

 ―「自信満々」の首相に違和感を覚えませんか。
 むしろ、有権者に危うさを感じる。政権交代や「刺客対決」が注目されると猛烈な風が吹き、争点が目立たないと投票に行かない。舞台でも、社会問題の風刺より「号泣県議」の物まねが受ける。今は平和だと思うが、投票しないと政治は変わらない。ここにも「安倍のみクスッ」を感じる。

 ―集団的自衛権や特定秘密保護法など、戦争放棄や表現の自由に踏み込む恐れがある施策が続きます。
 ずっと不景気で、中国と韓国には経済的にやられっぱなし。「日本はこんなに弱いのか」「強くしてくれよ」という空気を感じる。一方、戦争や言論統制の可能性は、平和すぎて想像しにくい。反対意見が身近に感じられない。

 舞台でも野党キャラがさえない。コントの注目キャラが、落選した野党第1党の代表と、ぎりぎり滑り込んだ元首相というのでは…。1強政治よりも、野党が元気なほうがコントも面白い。

    ◇

 ザ・ニュースペーパー広島公演は16日午後6時半から広島市中区の広島アステールプラザ。6千円(前売り5500円)。HOMEイベントセンターTel082(221)7116=平日のみ。

(2015年1月10日朝刊掲載)

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