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被災地から 住民ら復旧 「名水」再び 「原爆献水」取水地の緑井毘沙門堂 広島市安佐南区

 原爆の日に平和記念公園(広島市中区)にささげられる「原爆献水」の取水地の一つに、昨年8月の広島土砂災害で被災した安佐南区緑井町の毘沙門堂がある。災害で湧き水の管理設備が壊れ、水質が悪化したが、住民たちによる懸命な復旧作業で「名水」に戻った。10日、水質を調査した広島国際学院大の佐々木健学長が住民に報告し、喜びを分かち合った。(久保友美恵)

 毘沙門堂の境内には、湧き水の砂粒などを取り除くための沈殿池がある。湧き水は池を通り、ちょうず鉢に注がれる。だが、災害で池も鉢も土砂に埋まってしまった。

 バイオ環境化学が専門の佐々木学長は、約30年前からこの湧き水の成分を調査してきた。被災前は「おいしい名水」だったが、昨年9月の調査で大腸菌を検出。土砂崩れで大量の腐葉土が混ざり、池の浄化機能も失われたためという。

 きれいな水を取り戻そうと、寺の総代や住民が境内の土砂や岩を撤去。池の復旧や鉢の修復を果たした。佐々木学長が12月24日に水を分析すると、大腸菌は検出されず、水質が戻っていた。

 総代の一人、中野康夫さん(64)は「大切な式典に使われる水を守れてよかった」と笑顔。佐々木学長は「名水は守る気持ちがないと絶えてしまう。皆さんの復興への思いが実った」と住民たちの努力をたたえた。

原爆献水
 水を求めながら亡くなった被爆者を悼み、平和記念式典の前に平和記念公園の慰霊碑に供えられる。市が1974年に始めた。取水地は市内17カ所にある。

(2015年1月11日朝刊掲載)

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