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社説・コラム

【解説】艦載機の岩国移転、外堀埋まる 15年度予算案決定

 在日米軍再編に伴う新たな交付金制度で、対象となる山口県が交付を受けるのは、米海兵隊岩国基地(岩国市)への空母艦載機移転が予定通り進むことが条件だ。県は制度創設を歓迎する一方、現段階で艦載機移転を容認していない。政府は新交付金で、県が移転に反対できないよう外堀を埋めたと言える。

 県と岩国市は、艦載機移転を判断する前提が、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の「危険性除去」であると繰り返してきた。しかし、先の沖縄県知事選で、普天間飛行場の辺野古移設反対を掲げる前那覇市長の翁長雄志(おなが・たけし)氏が当選。政府は移設推進の構えを崩さないものの、行方は不透明さを増している。

 そうした状況下で創設される新交付金。防衛省は、2017年ごろまでとされる艦載機移転が地元の事情で進まなかった場合、交付金の支給をストップする可能性を示唆している。

 村岡嗣政知事は「新交付金と、艦載機の移転容認の是非は分けて判断する」と明言する。ただ、岩国基地やその周辺では移転に必要な施設整備が進む。新交付金制度が県の要望を踏まえて創設された経緯もある。

 県は、政府の「アメ」を受けながら、移転の是非について主体的に判断できるか。交付金を受けることで、村岡知事の説明責任は一層重くなる。(村田拓也)

(2015年1月15日朝刊掲載)

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