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社説・コラム

『中国新聞を読んで』 高橋秀年・「勝成塾」代表理事 「ヒロシマの記録」内容充実

 昨年12月31日付特集面(8、9面)の「ヒロシマの記録2014」は読み応えがあった。今年は戦後70年であると同時に、広島県民にとっては被爆70年でもある。そうした節目の年を迎える直前の記録特集は「核拡散 拭えぬ懸念」「被爆国 役割は重く」の見出しを含め、非常に強いメッセージ性を持っていた。

 見開き紙面は時系列の構成で読みやすく、忘れていたり知らなかったりする出来事もたくさん載っていた。1年分の出来事をまとめて読むと、記憶や考えを整理するのに役立つ。写真は8・6式典に参列した米国のケネディ駐日大使たちを捉えた1枚だけ。もっと写真を増やせば読者の視覚に訴える効果は増すだろうとも思うが、大半が文字ばかりの紙面の情報量は非常に多い。

 見出しも付けずに載っていた平和担当記者の箱組み記事も興味深く読んだ。「あの日を知る被爆者は少なくなり、老朽化した建物も町から消えている」という指摘が強く印象に残る。若年層への「記憶の継承」を急がなくてはならない。地元紙には、原爆や戦争の悲惨さと平和の大切さを子どもたちの心に訴え続けてもらいたいと切に願う。

 今年は、国会で集団的自衛権の行使に関連し、武力行使の要件などに関する法整備の審議が行われる。その作業を担当する国会議員や官僚の多くは、戦争体験がほとんどない人たちである。私はそのことに大きな不安を感じている。そして、丹念に事実を発掘し平和を追求しようという信念を基盤にした新聞の発信力に大きな期待を寄せている。被爆70年の今年は例年にも増して、「平和」をテーマにした国民的議論を大いに促してもらいたい。

 あらためて原爆や戦争で亡くなった大勢の方々に思いをはせ、原爆慰霊碑にある通り「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と心から強く誓いたい。今回の特集の見出しに「被爆国の役割は重い」という趣旨がうたってあったが、広島県民の立場から見れば「被爆県の役割は非常に重い」と言える。過ちを繰り返さないために県民がこぞって平和を願い、行動する年にしたい。

 1年をじっくりと振り返り、次の1年にどう行動すべきかをゆっくり考えさせられた。時間をかけて読み込む価値のある特集だった。(読者モニター=福山市)

(2015年1月15日朝刊掲載)

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