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社説・コラム

社説 戦後70年 エネルギー 「地産地消」を進めたい

 戦後一貫して、原油価格の動向は日本の社会や経済に影響を与え続けてきた。いまは世界的に価格が下落傾向となっている。

 原油安は、産油国に経済的な打撃を与える「逆オイルショック」をもたらしている。一方、石油を輸入する側の日本からすれば、燃料や原材料費の低下につながるなどプラスの面が大きかろう。

 しかし、現在のような原油安がいつまで続くのかは見通せない。これから多くの新興国や途上国が先進国並みの生活水準を求めて経済成長を果たせば、エネルギー消費は大幅に増え、原油価格も再び上昇に転じる可能性が高い。

 そもそも原油などの化石燃料には限りがあることを忘れてはならない。戦後の日本の歩みを振り返り、いかに持続可能な社会をつくっていけばよいのかを考えたい。

オイルショック

 1960年代の高度経済成長が国民の生活を豊かにしていったのは確かである。それに伴い増え続けたのがエネルギー消費だった。

 転機は73年の第1次オイルショックだ。製造業などはコストを削減するため、積極的に省エネに取り組んだ。その結果、産業部門のエネルギーの消費量は73年以降、ほぼ横ばいを保つ。

 これに対し、家庭部門の消費量は73年に比べ、いまは倍増している。各家庭がより快適なライフスタイルを求めたのに加え、核家族化で世帯数も増加したからだ。そうした大量消費社会に欠かせないエネルギーを供給するため造られていったのが、原発といえよう。

原発事故が転機

 再び大きな転機となったのが、東京電力福島第1原発の事故である。多くの国民が、電気を大量に使ってきた従来のライフスタイルを省みるきっかけになった。

 事故から4年が過ぎようとしている現在も、国民の間に節電の意識は保たれていよう。だが、時間がたつにつれ、少しずつ危機感は薄れていないだろうか。いま一度、それぞれの職場や家庭で省エネをしっかり定着させたい。

 押さえておかなければならないのは、日本が本格的な人口減少社会を迎えていることである。世帯数も2019年をピークに減少へ転じる見通しだ。

 その上で各企業や家庭が引き続き省エネに取り組めば、国内全体のエネルギー消費は確実に減っていくと思われる。エネルギー政策については、従来より幅広い選択肢が考えられるはずだ。

 そうした認識が安倍政権にはあるのだろうか。従来通りの経済成長路線を掲げ、原発を「重要なベースロード電源」に位置付けている。しかし、原発による電力がどれだけ今後の日本に求められているのかは、よくよく考える必要があろう。

地方の再生にも

 むしろ将来を見据えて日本が目指すべきなのは、分散型エネルギー社会の構築ではなかろうか。

 原発などの大型発電所から遠く離れた消費地に電気を送る現在のシステムは、送電時に失われる無駄な電力が多い。それぞれの消費地や周辺に太陽光や風力などの小型発電所を設けるエネルギーの「地産地消」を進めれば、送電ロスは大幅に減らすことができる。

 すでに各地で取り組みが始まっている。都市部では、太陽光発電やITによる省エネ技術、蓄電池などを組み合わせた「スマートシティー」の実証実験が進む。

 多様な再生可能エネルギーがそろう中山間地域でも取り組みは広がりつつある。例えば、林業を主力の産業とする岡山県西粟倉村は木質バイオマスと小水力発電で、エネルギー自給率100%を目指している。

 成熟社会の中で地域経済を活性化するには、地域内でお金を回すことが重要とされる。そうした面でも、エネルギーの地産地消は有望といえよう。さらなる省エネ社会の実現とともに、地方の再生にもつなげたい。

(2015年1月16日朝刊掲載)

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