『東京メール』 書道家・鴨山友絵さん
15年1月19日
書道家・鴨山友絵さん広島市安佐南区出身
ほろ酔いで思い記す催し「酔書」開催
筆と酒 引き出す心の内
テレビ番組の題字や、カタログのロゴを手掛ける書道家。甲骨文字や英語を取り入れた作品もあり、幅広い創作活動に挑んでいる。
BS放送の音楽番組の題字は出演する徳光和夫さんをイメージ。しっかりした人柄を太い線で、親しみやすさを文字の形を少し崩して柔らかい曲線で表現しました。ファッションカタログの題字では英語も使い、ロゴのような仕上がりに。同じ文字でも書き方でいろいろな表現ができる。その面白さや奥深さを感じながら取り組んでいます。
2010年に「酔書(すいしょ)」と名付けたイベントを始めた。参加者が、ほろ酔い気分で思い思いの言葉を筆で記すユニークな会だ。
作品作りに疲れたとき、お酒を飲んだら楽しく書けたのが酔書のきっかけ。乾杯で始まり、「大切なものは?」などのテーマを決めて書いてもらいます。親の名前や夢をしたためる人も。お酒で少し大胆になり、本心や普段は恥ずかしくて言えない言葉が出てくる。これを家に飾り、ふと目にしたときに自分の思いを見つめ直してもらえたらと考えています。
昨年6月に、博覧会「瀬戸内しまのわ2014」の関連イベントとして東広島市安芸津町で開きました。広島県内では初めてで地酒を飲みながらでした。参加者には筆やすずりを買い、書を始める人もいてうれしい。
小学生から書道を習い、文字を書く楽しさに目覚めた。
書道はお手本を見て正座してとか、きれいに書かなきゃというイメージがあり、苦手と感じている人も多い。筆を使うだけでなく、文字を書くことが随分と減っている。そのときの気持ち、込めた思いによっていろいろな表現ができる楽しさを知ってほしいですね。
日本語教師としての海外勤務の経験を、国際交流に役立てたいと意気込む。
いろんな国の人と出会えるので日本語教師になり、オーストラリアの高校で1年間教えました。しかし、好きな書道で日本文化を伝えたいと考え、29歳で転身。日本人と外国人が自己紹介をしながら書道をする催しもしており、今後も続けたい。
甲骨文字で「和」「包」「光」の3字を書いた作品がある。被爆地広島で生まれ育ち、平和の大切さを感じてもらいたいとの思いを込めた。
互いに偏見を持たずに理解し合えば平和や協調が生まれる。そんな思いで優しいイメージの漢字を取り入れた。作品とともに酔書を通して人と人の交流が生まれれば、平和にもつながるでしょう。今後は愛用する熊野筆の魅力を伝え、広島の酒蔵とコラボした酔書を開くなど古里での活動も広げたいですね。(山本和明)
かもやま・ともえ
広島市安佐南区の毘沙門台小、安佐中、安古市高と進み、関西学院大法学部を経て大阪大大学院言語文化研究科修了。正月三が日に、築地本願寺(東京)の正門に飾る「門前掲示の書」を今年、初めて手掛けた。東京都渋谷区在住。
(2015年1月18日朝刊掲載)