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原爆症 却下5000件 10年度 前年度比2.3倍 

■記者 岡田浩平

 被爆者援護法に基づく原爆症認定の却下件数が2010年度は5千件、前年度比で2.3倍に上ったことが31日、厚生労働省のまとめで分かった。一方で認定は半減の1435件。国の検討会で基準の見直しが議論される中での大量却下に、被爆者は批判を強める。

 原爆症認定は、被爆者の集団訴訟で国の却下処分を覆す判決が相次いだため、2008年度から新基準を採用。被爆地が爆心地から3.5キロ以内などの要件で、がんなど五つの病気を「積極認定」、ほかは個別に総合判断する。2008年度の認定は2007年度の23倍、2919件(異議申し立てを除く)、却下は62件だった。

 2009年度は肝機能障害など二つの病気を積極認定の対象に加え2807件を認定したが、却下も2134件に急増。さらに10年度は却下が認定を大きく上回った。却下が増えた背景として厚労省健康局総務課は「新基準後、認定できそうな人の審査を急いだ結果、要件を満たさない人の案件が多くなっている」と説明。2009年12月には8千件あった審査待ちは、3千件に減った。

 病気別の却下状況を公表済みの昨年12月分まででみると、白内障▽がん▽心筋梗塞-が全体の約7割を占める。白内障は爆心地から1キロ前後でも却下された事例が目立つ。却下理由について厚労省は「放射線起因性が認められない」と述べるにとどめる。

 こうした現状に日本被団協は「司法が原爆症と認めたのと同様の事例を厚労省は認めていない」と審査基準の再緩和を要求。昨年12月から厚労相の私的諮問機関である検討会で議論が始まっている。被団協の田中熙巳(てるみ)事務局長は「本来なら認定されるべき被爆者も却下されており、見直しを急がないと新たな訴訟を生みかねない」と話す。

(2011年4月1日朝刊掲載)

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