×

社説・コラム

天風録 「学生百人一首」

 <アメリカの広い大地に突き刺さるケイの打球は僕の憧れ>。神奈川の中2は、片仮名2文字だけで表している。松江の生んだ錦織圭選手が日本の星になった何よりの証しだろう▲「現代学生百人一首」の最新版を東洋大が出した。28回目のことしは、小学生から大学生まで約5万5千首が全国から届いたという。今どきの青春の一こまが切り取られ、興味をそそる▲ケータイ育ちが相手では、親の小言も腰砕け。<今までは「電話なんかで済ませるな」今では「せめて電話で話せ」>。面と向かって言葉が交わせぬ己を悟る若者も。<ラインでは明日話そうと決めたのに廊下で会うとうつむく二人>▲夏の土砂災害からきのうで5カ月。地元広島のノートルダム清心中2年望月晴(はる)さんは<ボランティア流した汗は広島の復興うながす希望のしずく>。舟入高1年市川海里(みさと)さんは<私でも何かの力になれるはず土砂に飲まれたあの街のため>と詠んだ▲きのうの変事を見越したかのような、胸にずっしりこたえる歌もある。<「正義って何だろうね」とつぶやいて歴史の教科書めくってる君>。イスラム過激派とおぼしき男が日本人を人質に身代金を迫る。砂上の戦後70年。

(2015年1月21日朝刊掲載)

年別アーカイブ