×

ニュース

原発増設 白紙に 首相表明 福島第1は全て廃炉

 菅直人首相は31日、東京電力福島第1原発事故を踏まえ、2030年までに原発を現状より14基以上増やすとした政府のエネルギー基本計画を白紙にして見直す方針を表明した。福島第1原発の1~6号機すべてについて「廃炉にしないといけない」とも指摘。政府は原発に代わるエネルギー源の確保と、地球温暖化対策推進の両立という難題に取り組むが、難航は必至。原発の輸出政策に影響する可能性もある。

 首相は、サルコジ・フランス大統領との首脳会談後の共同会見で「どういうエネルギー政策を進めていくか、あらためて議論する必要がある」とエネルギー基本計画の再検討を明言。巨額の補償問題を抱えた東電については「存続の可能性を含めて議論が必要だ」として、経営形態の在り方まで踏み込んだ対応の可能性を示唆した。

 これに先立つ共産党の志位和夫委員長との会談では福島第1の全廃炉に言及するとともに「(基本計画を)白紙で見直すことを含めて検討する」と強調。原子力利用を推進する経済産業省から原子力安全・保安院を分離できるか検討する考えを重ねて示し、「『原子力村』の雰囲気が存在する。反省が必要だ」と語った。

 経産省によると、日本では震災前、54基の原発で電力の30%弱を賄っていた。政府は昨年6月、温室効果ガスの排出削減目標の実現に向け、原子力の積極的な利用拡大を図るとするエネルギー基本計画を閣議決定した。


建設中3基 準備中11基

 昨年6月に閣議決定されたエネルギー基本計画は、温室効果ガス排出量削減などのため原発推進を強く打ち出し、2020年までに、9基の原子力発電所を新増設。「30年までに少なくとも14基以上の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約90%を目指していく」とした。

 電気事業連合会によると現在、日本には事故を起こした福島第1原発の6基を含め54基の商業原発が存在し、08年度の稼働率は約60%。中国電力の島根原発3号機(松江市)と電源開発(Jパワー)の大間原発(青森県)など3基が建設中だ。

 ほかに「着工準備中」が中国電力の上関原発(山口県上関町)など11基あるが、この中には今回の震災と事故で大きな被害を受けた福島県浪江町と南相馬市にまたがる東北電力の浪江・小高原発や福島第1原発7、8号機も含まれる。東海地震が想定される静岡県御前崎市の中部電力浜岡原発6号機は、15年に予定していた着工を先送りすることを決めた。

 事故を受け、関連の自治体などからは「安全性が確立されるまで計画を凍結すべきだ」との声が相次ぎ、地元の理解を得ることは難しい現状だ。

(共同通信配信、2011年4月1日朝刊掲載)

年別アーカイブ