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社説・コラム

天風録 「ギリシャの意趣返し」

 ギリシャの総選挙で圧勝した野党の公約は、これでもかといわんばかりの大盤振る舞いだった。行革で職を追われた公務員はみんな雇い直し、最低賃金を引き上げ、減税も、と▲日本では、「ない袖は振れない」が政権交代の教訓だった。あちらでは、これが財源の当てだろうか。ナチス占領下の第2次大戦中、無理強いされた巨額のドイツ向け融資がまだ返されていないと現地紙が今月報じた▲その額は日本円で1兆5千億円を下らないという。ギリシャ会計検査院の調べというから、あながち眉に唾をつけるような代物ではあるまい。むろん、名指しで非を鳴らされたドイツは「その話は決着済み」との立場を崩してはいないが▲大借金で傾いたギリシャ政府は、欧州連合(EU)などに財布のひもを握られている。国民の目には、後ろで糸を引くのが締まり屋さんの大国ドイツと映っているようだ。ほこりにまみれた昔話を蒸し返したのも、一矢を報いる手始めかもしれない▲平和をうたう近代五輪発祥の地に、いっときは物乞いの姿があふれた。親の失業で腹ぺこの子どもは今もいる。「失われた尊厳を取り戻そう」という野党の勝利宣言は、華々しくも痛々しい。

(2015年1月27日朝刊掲載)

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