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社説・コラム

社説 通常国会開幕 活発な政策論争を望む

 第3次安倍内閣の発足後初となる通常国会がきのう、召集された。

 今国会は、安全保障法制のほか、農業、社会保障、雇用ルールの改革など、日本の将来を左右する重要な法案の審議が予定されている。

 アベノミクスに陰りが見える中、景気回復が遅れる地方経済をどう活性化するかも論戦が待たれる。

 それなのに、冒頭から盛り上がらない。衆院選後に通常行われるはずの首相の所信表明演説がなかったためだ。

 野党側が政権に対して強く要求せず、与党ペースにのまれたためとされる。国の指針を示す重要演説が省かれ、それをめぐる丁々発止のやりとりが聞かれないことは極めて残念だ。

 与野党はさらに緊張感を持ち、活発な政策論争へとつなげてもらいたい。

 会期は6月下旬までの150日間。政府与党は統一地方選前半の4月12日までに、2014年度補正予算案と15年度当初予算案を成立したいとしている。

 ただその予算案の中身をみると、政府が掲げる「改革」に値するのか心もとない。

 2015年度の一般会計当初予算案の総額は96兆円を超え、過去最大だ。当初と補正を合わせると3年続けて100兆円規模となり、歳出増に歯止めがかかっていない状況である。

 景気刺激策ばかりを優先するあまり、将来世代へのツケを増やし続けていいはずがない。インフラの整備などを名目に、不要不急の事業が紛れていないかしっかり精査してほしい。財政健全化の道筋を示すことこそ政治の責務であろう。

 後半国会の最大の焦点は、集団的自衛権の行使容認を踏まえた安全保障法制である。武力行使の3要件を法律の条文に記す予定だが、どこまで歯止めとなるのか議論が分かれる。戦後の日本が築いてきた非戦の精神が崩れるとの懸念もあろう。

 安倍政権は13年、国民に異論の強い特定秘密保護法案について「数の力」で強引に押し切った経緯がある。同様の手法を繰り返すことは許されない。

 折しも、過激派「イスラム国」とみられるグループによる邦人人質事件が起きている。日本の安全保障政策の在り方が、より大きな論点となる可能性もあろう。

 同時に問われるのが、野党の力である。

 野党第1党の民主党は、岡田克也新代表の下での執行部が発足して最初の国会となる。「1強多弱」と呼ばれる現状を打破し、与党に代わる新たな対案を示せるかどうか。党としての真価が問われよう。

 党首討論による活性化も求められる。国会改革にからむ申し合わせで昨年5月、月1回の開催で合意していたが、次第に開かれなくなっている。

 昨年の衆院選で躍進した共産党は今回、発言する資格を得る。安全保障のほか消費増税や原発再稼働などをめぐって、活発な議論を展開してもらいたい。

 さらに「多弱」を脱するには野党同士の連携も不可欠だろう。国会での共闘について議論を深めてほしい。

 国会が本来の機能を発揮するためには、確かな野党の存在が不可欠だ。各党は肝に銘じてもらいたい。

(2015年1月27日朝刊掲載)

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