×

ニュース

ホロコースト忘れない アウシュビッツ解放70年 東京でシンポ

 ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)について考えるシンポジウムが27日、東京都の国連大学であった。NPO法人ホロコースト教育資料センター(東京)が、アウシュビッツ強制収容所(ポーランド)の解放から、ちょうど70年となる日に合わせて主催。センターの石岡史子代表ら3人が「いま、ホロコーストを知る意味」をテーマに意見交換した。

 3人は、ナチスが一般市民も扇動してユダヤ人迫害を進めた背景に着目。石岡代表は「ホロコーストには、ナチスという国家の問題だけではなく、人間が人間をよそ者扱いする要素もある。他人を差別する人間の弱さを検証することが大切だ」と訴えた。

 鳥取大の高橋健司准教授(社会科教育)は「民族的・人種的差別は、ヘイトスピーチで分かるように今の日本でむしろ高まってきている。ホロコーストを引き起こした人たちの差別意識を見つめ直す必要がある」と強調。ホロコースト記念館(福山市)の大塚信館長は「ステレオタイプな狭い視野で考えたり、無関心を装ったりしては危険。人間が克服しなければいけない問題だ」と指摘。3人はいろいろな立場の人を受け入れ、個人を尊重する重要性を再認識するよう促した。

 イスラエルの駐日大使や、教員、大学生ら約60人が参加。シンポに先立ち、強制収容所の実態に関係者の証言だけで迫ったフランス映画「SHOAH(ショア)」の一部上映もあった。(山本祐司)

アウシュビッツ強制収容所
 ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)で用いられた最大規模の強制収容所。1940年6月、現在のポーランド南部のオシフィエンチム郊外に開設された。当初はポーランド人政治犯を収容していたが、42年からユダヤ人を主な対象とする「絶滅収容所」として機能。45年1月のソ連軍による解放まで、欧州全域から移送されたユダヤ人に加え、少数民族ロマ、ソ連軍捕虜ら100万人を超す犠牲者を出した。79年、世界文化遺産に登録された。

(2015年1月28日朝刊掲載)

年別アーカイブ