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被災高校生が新たな一歩 広島・観音高で始業式

■記者 門戸隆彦

 福島第1原発のある福島県大熊町から広島市南区の市営住宅に家族で避難してきた高校生坪井萌さん(16)が6日、転入した西区の観音高で始業式を迎えた。2年生の級友に温かく迎えられ、新たな一歩を踏みだした。

 3月11日、萌さんは友人とスーパーを出た直後、激しい揺れに襲われた。道路はひび割れ、波を打った。友人と分かれて帰宅し、母博子さん(44)、妹の美沙紀さん(13)と合流。職場から戻った父晃則さん(47)とともに暗闇の中、夜を明かした。

 翌朝、防災無線で避難指示が出され、家族4人でバスに乗り町を出た。着いたのは原発から約40キロ離れた避難所。放射線への不安は日増しに強くなり、15日、晃則さんの親類が暮らす広島に移った。

 萌さんはこの日、自治会が用意してくれた制服に身を包み、家族に見送られて家を出た。始業式では、在校生約560人とともに震災の犠牲者に黙とうをささげた。中川清校長は「新しい所では、みんな不安になる。平常心で接してほしい」と語り掛けた。

 式後、萌さんは教室に案内され、約40人を前に自己紹介。女子生徒が次々と駆け寄って声を掛けると、表情がほころんだ。

 福島の友人とは離れ離れとなり、メールで近況を伝え合う。帰宅後、「緊張したけどみんないい人だったから大丈夫そう」と打ち込み、新しい制服姿の写真を添えて送った。

 広島県教委によると6日現在、県内の公立小、中、高校に被災地や周辺から入学・転入した児童生徒は52校計74人となっている。

(2011年4月7日朝刊掲載)

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