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廃炉の世紀 第3部 課題を聞く <3> 日本原子力産業協会・服部拓也理事長

オープンな議論 大切 地域に向き合う誠意を

 原子力に関わる企業や自治体など約450社・組織が加盟する日本原子力産業協会(東京)。東京電力の元副社長でもある服部拓也理事長は「福島第1原発の事故を反省し、立地地域と誠実に向き合う必要がある」とし、オープンな議論の必要性を強調する。

 ―廃炉の課題は。
 原子力は建設、運転を経て廃炉時代に入っている。主な問題は技術、費用、廃棄物の処分だ。運転を「原則40年」に制限され、電力会社は急に重要な判断を迫られて難しい面もある。

 運転を止めても、廃炉作業自体は急ぐ必要はないと考える。日本は50年ほどの間に57基の原発を造った。そのペースでの廃炉は経営的な負担、雇用への影響が大きい。平準化も必要だ。国は「20~30年」が標準的な期間とするが、適切ならば長い時間をかけてもいいと思う。国内の廃炉をまとめて効率的に担う組織の新設なども検討すべきだ。

 ―廃炉に伴う放射性廃棄物の処分地はありません。
 まだ時間があり、今すぐ決める必要はない。順序をつけて一つずつ解決すべきだ。比較的放射線量が高い炉心構造物などが特に問題になるが、当面、発電所内で貯蔵して処分地を探すことになるだろう。電力会社は安全性や対策を説明した上で、地元に「処分地がないので当面貯蔵させてください」とはっきり言うべきだ。課題から逃げようとすれば誠意を疑われる。

 ―国や電力会社が想定する廃炉費用を「過小評価」と指摘する声があります。
 現行の国の引当金制度はずいぶん前の勘定なので、確かに、現状や個々の原発に合わせて計算し直す必要があるだろう。それは廃棄物の処分がいかに合理的にできるかで決まる。リスクを語らないことは意図しなくても相手をだますことになる。大切なのは議論をオープンにすることだ。

 ―廃炉は地域に大きな影響を及ぼします。電力会社はどう対応すべきですか。
 廃炉を検討する電力会社は、できるだけ早く地元に考え方を伝えるべきだ。後出しで「実は…」と説明するのが一番まずい。電力業界は未確定なことを話すのをためらう体質があるが、安全のリスクを十分に語ってこなかった福島の事故を反省しなければならない。

 立地地域が原発に過度に依存する構造を続けるべきではない。廃炉後のまちづくりを地元と一緒になって考え、ソフトランディングの道を探ってほしい。

 ―国の関与の在り方は。
 放射性廃棄物の問題にはもっと関与が必要だろう。廃炉などで出る低レベル廃棄物の処分は民間の責任とはいえ、枠組みを作り、軌道に乗るまで国が主導するというやり方もある。使用済み燃料から出る高レベルの廃棄物は国の責任を明確にして前面に出るべきだ。

はっとり・たくや
 東京大大学院工学系研究科修了。1970年東京電力入社。福島第1原子力発電所長、原子力本部副本部長、副社長などを経て2006年退任。07年から現職。大阪府出身。

(2015年2月1日朝刊掲載)

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