×

ニュース

被爆者の思い 東京でも伝承 国立市が事業スタート

 東京都国立市が31日、被爆体験を次世代に語り継ぐ伝承者の育成事業を始めた。参加者は市内の被爆者から体験を聞き取るなど1年間の研修を経て、学校や市の平和事業で講演活動する。同じく伝承者を育成している広島市によると、被爆地以外での取り組みは「聞いたことがない」という。

 研修初日のこの日は、公募で選ばれた20人中17人が参加した。協力する市内の被爆者団体「くにたち桜会」(26人)の副会長で、広島市で被爆した平田忠道さん(84)は「もう70年になるが、忘れられぬ地獄の経験。二度と起きないように思いを受け継いでほしい」と訴えた。

 広島市で被爆者調査を続ける一橋大大学院の根本雅也特任講師(35)は、原爆が被爆者の心身や人生に与えた影響を具体的な事例で紹介した。

 研修は月1回ペース。平田さんたち被爆者から、戦前の暮らしなども含めて計約10時間にわたって当時の様子を詳細に聞き取る。元アナウンサーから、発声法や分かりやすい言葉の選び方など朗読技術も学ぶ。

 伝承者を目指す沢村智恵子さん(55)=東京都青梅市=は「高校まで広島市で暮らし、平和教育も受けたが、もう一度学び直したい。親世代の被爆者の思いを引き継ぐ」と意気込んだ。国立市の担当者は「証言のコピーではなく、参加者それぞれの言葉と表現で新たな語りを生み出せるよう、行政も一緒に模索していきたい」としている。(藤村潤平)

(2015年2月1日朝刊掲載)

年別アーカイブ