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被曝医療充実へ学生間交流 島根大とカザフの国立医大 協定2年 単位共通化検討 

 旧ソ連最大のセミパラチンスク核実験場があったカザフスタンのセメイ市(旧セミパラチンスク市)にあるセメイ国立医科大と、中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の事故時に医療拠点となる島根大が交流協定を結んで2年。両大は、今後も被曝(ひばく)者医療の充実に向け、学生間の交流を強める。(松島岳人)

 協定は2013年1月28日に締結。1991年の実験場閉鎖後に増加するがん患者を現地で診療してきた同大の野宗義博教授(64)=腫瘍外科=が仲介した。

 同大は毎年8、9月、野宗教授と広島市南区の甲状腺専門医、武市宣雄医師(70)をセメイ市に派遣。これまでにがん患者8人を手術し、現地の医師を指導した。同大医学部(出雲市)は14年10月からことし3月まで、同医科大の若手医師4人の研修を受け入れている。

 昨年5月には、同大医学部臨床教授でもある広島大の星正治名誉教授(67)=放射線生物・物理学=が、同医科大で、低線量被曝の影響を調べる動物実験を開始。原発事故に備えた研究も始めた。

 島根大と同医科大は修士、博士課程の単位の一部を共通化する学生の交流の強化を検討している。野宗教授は「被曝医療の専門家を一人でも多く育てたい」という。

 ことし1月24日には、被曝者医療の現状について情報交換する「島根・セメイ国際シンポジウム」を同大医学部で初めて開いた。同医科大のトレバイ・ラヒプベコフ学長(62)は、セメイ市の住民に染色体異常が見つかる例が増えていると紹介。「島根大との関係を強化し、長期的な共同研究をしたい」と訴えた。

 野宗教授は「島根原発を抱える島根大にとって、核の問題は切り離せない。協定の成果を人材育成や知見の充実につなげたい」と話している。

(2015年2月1日朝刊掲載)

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